【エルサレム前田英司】トルコのエルドアン首相は30日、軍に対し、同国からの分離独立を掲げるクルド系武装組織「クルド労働者党」(PKK)が潜伏するイラク北部に越境攻撃する許可を与えたと明らかにした。
ロイター通信によると、首相は「28日の閣議で(攻撃許可を)決定した」と述べた。PKK掃討を巡っては、トルコ国会が10月17日に軍のイラク越境侵攻を承認。今回、政府が正式に「ゴーサイン」を出したことで、軍が攻撃を開始する条件が整った形だ。
ただし、政府の強硬姿勢は、PKK掃討を求める世論の高まりに配慮したとの見方もあり、軍がただちに実行するかどうかは不明だ。PKKの潜伏先は山岳地帯にあり、冬入りで既に積雪している。このため、攻撃に踏み切ったとしても大規模な陸上部隊の投入は現実的ではなく、潜伏拠点を狙った空爆などに限定される可能性が高い。現地からの情報によると、今のところトルコ部隊の動きに大きな変化はないという。
トルコは最大10万人ともいわれる軍部隊をイラク北部との国境地帯に集結させ、米国やイラクにPKK対策での協力を迫っていた。クルド人地域のイラク北部は同国内でも比較的安定しており、米、イラク両政府は情勢の不安定化を懸念してトルコに越境攻撃の自制を求めてきた。
毎日新聞 2007年12月1日 0時55分