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韓国のトキ復活へ日中連携
韓国政府が国内で絶滅したトキを復活させようと、日本や中国と連携して繁殖活動に乗り出すことが30日、分かった。同政府は中国からトキを譲り受けて人工繁殖を試み、将来的に野生化を目指す。日本の関係者は「日中韓が手を結び、トキの繁殖、野生化へ取り組むことは望ましい」(佐藤春雄・佐渡とき保護会顧問)と歓迎している。
トキは日本のほか、中国、朝鮮半島、ロシアなどに分布していたが、韓国では1970年代後半に、軍事境界線付近で確認したのを最後に絶滅したとされる。
韓国政府は来年10月、同国南部の昌原で水鳥などの生息に重要な湿地保全などについて協議するラムサール条約締約国会議の開催に合わせて、トキ復活プロジェクトを推進する方針を決めた。
昌原の近くのラムサール条約登録湿地で、かつてトキが生息していた韓国最大の沼、牛浦沼にトキの飼育センターを建設する予定。既に地元関係者は中国のトキ救護飼育センターを訪れ、資金援助などを通して両国の関係を深めてきたほか、今年9月には新潟県佐渡市の佐渡トキ保護センターを視察するなど日中韓の連携を模索していた。
復活計画を担う、韓国野生動物研究所の韓尚勲所長は「プロジェクトが成功すれば、国を超えて東アジア全体で絶滅危惧(きぐ)種を復活させる初のケースになる。トキが日中韓を自由に飛び回る日を夢見ている」と意気込む。締約国会議を機に、中国側からのトキ贈呈へ向けて交渉しているという。日本では、飼育施設に関するアドバイスや飼育ノウハウなどの情報提供支援ができないか検討している。
韓国がトキの人工繁殖に乗り出すことについて、佐渡トキ保護センターの金子良則獣医は「個体数が増えれば、遺伝的な多様性が確保できるため、近種交配を防ぐことにつながる。繁殖地の分散で、鳥インフルエンザなどで全滅するリスクも軽減できる」と話す。
中国のトキ救護飼育センター元主任で、現在は九州大特別研究員の席咏梅さんは「韓国の自然環境は中国や日本と似ており、繁殖が実現する可能性は高い。中国政府も積極的に協力するだろう」と話している。