自家醸造、100の自問自答-13

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(13). 糖化行程について

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糖化行程について。
  • 麦芽の粉砕と破砕について
    • 粉砕とは製粉すること。
    • 破砕とは麦芽の粒をいくつかに砕くこと。
    • ビール造りでは、粉砕をすると殻までが粉々になるので、粉砕はしない。
    • 麦芽の殻は後に醪を麦汁とカスに分けるときにフィルターの役目を果たす。
    • ビール造りでは麦芽を破砕する。
  • 麦芽の破砕について。
    • ローラーで麦芽を押しつぶす。
      • 麦芽の殻はそのままで、中身だけが砕ける。
      • ローラータイプの破砕では、一つのローラーがモーターで回り、対となるローラーはfreeとなっている。
      • 2つのローラーに微妙な速度差が生じ、麦芽は押しつぶされるように破砕する。
    • 2ローラータイプと4ローラータイプがある。
      • 4ローラータイプは2ローラーが二つある。
      • 糖化のことを考えると、4ローラーの方が良い。
  • 糖化行程─英語ではマッシング、ドイツ語ではマイッシュ
    • デンプンを発酵性の糖と非発酵性の糖とに分解すること。
    • 糖化により6種類の糖分が出来る。
      • マルトース(麦芽糖)─2糖類 ─────── 46〜50%
      • マルトトリオース(麦芽三単糖)─3糖類 ── 12〜18%
      • グルコース(ブドウ糖)─単糖類 ────── 8〜10%
      • スクロース(しょ糖)─2糖類 ─────── 4〜8%
      • フルクトース(果糖)─単糖類 ─────── 1〜2%
      • デキストリン(アミノペクチン)─多糖類 ── 19〜23%
    • 発酵可能な糖はマルトース、マルトトリオース、グルコース、スクロース、フルクトース。
      • 発酵可能な糖は3糖類までである。
    • デキストリンは非発酵性の糖で甘みとしてビールに残りビールのボディになる。
      • デキストリンが多いビールはフルボディで甘いビール。
      • デキストリンが少ないビールはライトボディで水っぽいびーる。
      • デキストリンの量をどうコントロールするかはビールのスタイルによる。
  • αアミラーゼとβアミラーゼについて。
    • デンプンはグルコースが1-4 結合、1-6 結合で結合した高分子化合物。
    • βアミラーゼについて。
      • βアミラーゼは1-4 結合を端から分解して、グルコース、マルトース、マルトトリオースに分解する。
      • PH5.4から5.6で、温度が57から66℃で最も活性が良くなる。
    • αアミラーゼについて。
      • αアミラーゼは1-6 結合を分解して、麦芽のデンプンをデキストリンに変える。
      • PH5.6から5.8で、温度が65から70℃で最も活性が良くなる。
      • デキストリンが多くなり、ミディアムからフルボディのビールが出来る。
  • 糖化の温度コントロールについて。
    • 60℃で糖化をしたとき、デキストリンの割合が少なくライトボディのビールが出来る。
    • 70℃で糖化をしたとき、デキストリンの割合が多くフルボディのビールが出来る。
  • 醪(マッシュ液)のPHとアミラーゼ活性について。
    • マッシュ液のPHが高いとアミラーゼ活性が悪くなる。
    • マッシュ液のPH5.2が一番理想的な状態。
    • 少なくともPH5.6以下にする。
    • バーバリア地方の水は硬水で、炭酸塩が多い。
      • すなわち、アルカリ度が高くアミラーゼ活性が阻害される水を使っている。
    • イギリスのバートンオントレッド地方の水は、硫酸塩が多い。
      • すなわち、酸性度が高く糖化しやすい水である。
  • 醪(マッシュ液)の濃度と糖化について。

     

  • 以上より、ライトボディのビールを造りたいときは、
    • マッシュ液の濃度:水/麦芽=2.5(l/Kg)にする。
    • 糖化温度を60℃にする。
    • マッシュ液のPHを5.2にする。
  • ボディについての考え。
    • 標準的な麦汁を75%発酵させる(希薄化)酵母でビールを仕込んだとする。
      • 麦汁の初期比重(OG)が1.052とする。
      • 最終比重(FG)は1.013となる。
      • (OG-FG)*131.9 がアルコール容量濃度となる。
      • (1.052-1.013)*131.9=5.1%
    • 麦芽の量を増やす。
      • OGが1.062とする。
      • 75%発酵の酵母で仕込む。
      • FGは1.0155 となる。
      • (1.062-1.0155)*131.9=6.13%
    • 初期比重の高い麦汁でビールを仕込むと、
      • アルコール濃度は高くなり、
      • ビールの残存糖が多くなり、フルボディのビールになる。
    • アルコール濃度よりビールのボディを判断することが出来る。
      • アルコール濃度:6%以上のビール→ミディアムボディ
      • アルコール濃度:7%以上のビール→フルボディ
    • ボディを構成する要素
      • 甘み(残存糖分)
      • アルコール濃度
      • タンパク質
  • Kgパーリッター度(゜L/Kg)について。
    • 麦芽を購入して、データーを見る。
    • たとえば、ピルスナーモルト 270 1.5 SRM と書いてあったとする。
      • この270とは、Kgパーリッター度といい、麦芽 1Kg で1.001の比重の麦汁が270 リットル出来ることを意味する。
      • このピルスナーモルトを使って、初期比重1.052の麦汁を1000リットル作るには、
        • 初期比重1.052、1000リットルの麦汁を1.001に換算すると、52000リットルになる。
        • ピルスナーモルト1Kgは比重1.001の麦汁 270 リットルになる。
        • 52000÷270=192.6 Kg(答え)
        • すなわち、 192.6 Kg のモルトを使うと、比重1.001の麦汁が52000リットルでき、比重 1.052 に換算すると1000リットルになる。

糖化行程(インフュジョンマッシュとデコクションマッシュ)について。

  • インフュジョンとデコクションとがある。
  • インフュジョンとは、
    • たとえば、お茶を飲むときに、「きゅうす」にお茶の葉とお湯を入れてのむ。
    • 浸す、という意味。
  • デコクションとは、
    • たとえば、麦茶を作るときには、「やかん」に麦茶の麦を入れて湧かす(煮る)。
    • 煮立てる、これがデコクションの意味。
  • インフュジョン・マッシング
    • single infusion mash
      • マッシュ液の温度を変えない。
      • 66から67℃で糖化を始めて64℃で終了。
      • イギリスで多く仕込まれている。
      • タンパク質の多い麦芽は使えない。
      • スペースが少なくてすむ。
      • 仕込み時間も短い。
    • two step infusion mash
      • 50℃でタンパク分解。
      • 67℃で糖化し64℃で終了。
      • タンパク質が多いドイツ系麦芽は、タンパクが糖化の妨げになるので、タンパク分解を行う。
      • ドイツでも、デコクションよりtwo step infusion mashが多くなってきている。
  • デコクション・マッシング
    • マッシュ液の温度を上げるために、マッシュ液の一部を取りだし煮沸(デコクション)して元のマッシュ液に戻す。
    • 特に南ドイツの水は炭酸塩が多く、PHが高い。
    • 35℃でマッシングをするAcid restがある。
    • 30分間35℃でマッシュ液を保つ。
    • マッシュ液のPHを下げることにより、後の糖化行程がスムーズに行くようにする。
    • また、βグルカンの多く含む麦芽では、40℃で20から30分間、そのままにする。
    • βグルカンはその温度で最も分解される。
    • βグルカンの分解酵素であるβグルカナーゼは40℃で最も活性が良い。
    • βグルカンはロータリングに時に目詰まりの原因となる。
    • マッシュ液の酸度を下げるために、水質調整剤があり、最近では、それを使っているところもある。
    • 2度目のデコクションでマッシュ液の焦げつぎが起こりやすい。
    • マッシュ液の色が濃くなる。
    • デコクション中に酸化メラノイジンが出来やすい。
    • デコクションマッシングは3から4時間かかる。時間がかかる。

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作成日時 2003年7月31日