− 神々の宴 −

伊邪那美命

(いざなみのみこと)

『古事記』では伊邪那美命、『日本書紀』では伊弉冉尊(いざなみのみこと)と記されている。

神名の意味はイザナは誘(いざ)なうの意味で、ミが女性を表す。先に生まれた伊邪那岐命との交合を表した神名であろう。

同時期に生まれた国之常立神豊雲野神宇比地邇神須比智邇神角杙神活杙神意富斗能地神大斗乃弁神淤母陀琉神阿夜詞志古泥神、伊邪那岐命と並んで「神世七代」と称される。

『記紀神話』では、伊邪那岐命と共に天津神に国造りを命じられ、はじめて夫婦となって交合し大八島国(日本の国土)と大事忍男神ら35の神々を生んだ。これらの神は、家屋、海、山、川、風、草、木、土地などの神である。最後に火神を生むときに伊邪那美命が火傷を負い死んでしまう。

伊邪那美命を忘れられない伊邪那岐命は黄泉国(死者の国)に行き戻ってくるよう説得するが、伊邪那美命は黄泉国の食べ物を食してしまったため戻れないという。

しかし黄泉国の神に相談してくるので、その間自分の姿を見ないようにと御殿の中に帰っていった。その間がたいへん長くて、伊邪那岐命は待ちきれなくなり御殿の中へ入っていった。すると蛆がたかり、ごろごろと鳴って、頭には大雷、胸には火雷、腹には黒雷、陰部には析雷、左手には若雷、右手には土雷、左足には鳴雷、右足には伏雷、の合わせて八種の雷神が伊邪那美命の体にいた。

これを見た伊邪那岐命はその場から逃げ出し、夫に姿を見られた伊邪那美命は恥じて夫を殺そうと追いかけるも、追いつくことが出来ず、夫の世界(人間の世界)の住人を一日に千人絞め殺すという呪いをかける。これに対して伊邪那岐命は千五百もの産屋を建てることを誓った。このことより、世界では一日に千五百人が生まれ、千人が死ぬことになったという。

『古事記』には伊邪那美命の埋葬地は出雲国と伯耆(ほうき)国の境の比婆山(ひばやま)と記され、『日本書紀』には一書に紀伊国の熊野の有馬村とある。

伊邪那美命を祀る主な神社
多賀神社(滋賀県犬神群多賀町)