利益管理制度を構築する上で予算制度を導入することは上場会社としての義務です。上場会社として株主利益に報いるためにも株主に対して会社の計画および結果について説明する責任があります。早い段階で予算制度を導入し、時間をかけて自社の利益管理を十分に行えるように準備をする必要があります。
予算制度の意義
予算制度とは、合理的根拠から策定された利益計画について、その利益計画を達成するための仕組みを作る、利益管理制度のことをいいます。予算制度の必要性とは、大きくは2点の目的があります。
取引所の適時開示要請に応えられるような業績見通しを発表する体制ができていないのであれば投資家との信頼関係もできず、エクイティファイナンスがしにくくなる可能性もあります。
総合予算の策定(予算編成について) - ステップ1
組織体制の整備と予算部門、予算管理部門の決定、予算管理規程等のルールの制定
予算制度を有効的に機能させるためには、予算部門を決定する適正な組織体制の構築が必要です。
具体的には、組織図の整備、組織規程、において適切な組織体制を検討します。また、別途予算管理規程を作成し運用を開始することが必要です。
総合予算という考え方はそれぞれの予算(〇〇事業売上予算など)について基幹部署を設け、下から予算を上げさせて最終的に取りまとめ部署(経営企画室など)で予算を作成することをいいます。従いまして、それぞれの予算を策定する責任部署の決定に際して組織の見直しが必要になる場合もありますので、職務権限規程・業務分掌規程などにより、予算制度に関する責任と権限、業務範囲を明確にしておく必要があります。
予算編成
- 予算策定のポイント
- (1)予算編成においては、部門別予算・全社的予算と関わらず、全ての数値において合理的な根拠が必要です。根拠となるデータは、市場環境や客観的な市場データ、会社の過去の実績や同業他社の動向など、客観性を持たせたものが必要です。特に売上の予算の部門については新規出店戦略、人材採用計画などの具体的なデータを基に根拠のある数値を立てる必要があります。
- (2)予算編成方針(ガイドライン)を明確にすることが必要です。
- (3)予算編成は必ず積み上げ方式とします。
- (4)ガイドラインや予算管理規程で日程や書式などを制度化・様式化することが必要です。
- (5)予算編成の調整過程において出た代替案を把握しておくことが必要です。予実分析後の改善策や代替案によるアクションプランを立てやすくします。
予実分析と運用について - ステップ2
予算部門ごとの差異分析と予算管理部門への報告
定例の取締役会までに予算部門ごとに差異の分析をします。フォーマットは会社ごとの実態に合ったものを作成・運用します。
取締役会においての全社的差異分析と対応策の検討
予算管理部門において部門別予算実績表を集計し、取締役会において差異の分析をします。予実分析については、以下のような原則があります。
- (1)迅速性を最重視します
- 予算管理部門が全社的な集計および分析を行います。月次の予実対比はあくまで内部報告用です。
- (2)重要性のあるものについて分析します
- 差異の許容範囲を定め、一定額もしくは一定率以上の差異があるものについて差異分析を行います。異常値の出たものについては特に注意が必要です。
- (3)具体的な対応策を検討・実施します
差異分析の結果による対応策が検討されなければ、予算管理のそもそもの意味がなくなってしまいます。必ず具体案を検討し、担当部門で実行し、次の月次取締役会において実施結果を検討します。
ローリング方式による、短期・中長期利益計画の見直し
上場後は発表した利益計画に売上高で10%以上、経常利益で30%以上の変動が予測された場合には直ちに公表しなくてはなりません。
上場準備の段階ではどんなに少なくとも半期に1度は月次の進捗状況を参考にし、大きな変動があるのであれば利益計画の改定が必要です。
予算管理体制の構築
より精度の高い、迅速化された予算管理体制を構築するにはある程度の時間と経験値が必要であります。
経営管理において月次での予算管理体制は、会社内で起こっている問題点などをタイムリーに吸い上げ、対応策を練り実行していくということで、よりよい組織にしていくことにもつながります。やはり早い段階からの導入により意識的に予算管理体制を構築することが望まれます。
補足事項
月次決算について
予算制度を確立する上で迅速性のある月次決算を精度の高いものにしておく必要があります。
月次決算は、あくまで内部報告用であり予実差異を分析するための現状確認が1番の目的です。よって、正確性・厳密性よりも迅速性を重視することが必要です。従って合理的な範囲内では推定値を用いることは許容してもいいでしょう。
翌月の10日頃までに前月実績値を把握できるようにすることを目標にして体制を構築します。
予算の担当部署と役割について
予算管理の担当部署は、組織規模によって様々ですが、一般的には、経営企画室、社長室、経理部門などで担当しているケースが多いといえます。
予算策定行動はあくまでライン部門であり、予算管理担当部署の業務ではないことに注意が必要です。一般的には予算管理担当部署は、以下のようなことを担います。
- (1)予算委員会の事務局
- (2)トップの予算方針の作成と承認後の伝達
- (3)各部門の予算とトップの予算方針とのすり合わせ
- (4)予算・実績の比較、乖離分