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中東和平会議:交渉再開(その1) 合意楽観許さず

 【エルサレム前田英司】イスラエルのオルメルト首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長は28日、米ワシントンで再びブッシュ大統領と会談し、27日の中東和平国際会議で確認した和平交渉の再開を「宣言」する。焦点となるパレスチナ国家建設に向けた最終地位問題は、これまで先送りされてきた難題ばかり。双方の主張には大きな隔たりがあり、08年末を目標とする和平合意は楽観できない。

 ◇西岸地区、入植者なお増加--国境画定作業の障害に

 アッバス議長は国際会議での演説で▽エルサレムの帰属▽パレスチナ難民の帰還権▽国境画定▽ユダヤ人入植地▽水資源▽治安維持--の最終地位問題を列挙し、「包括交渉を始めなければならない」と強調。一方、オルメルト首相は「すべての重要課題に取り組む」と述べるにとどめた。

 最大の障害はイスラエルが占領地・ヨルダン川西岸に抱えるユダヤ人入植地だ。国際法に違反しながらイスラエル政府が認める入植地は約120カ所。政府未承認の入植地も約100カ所ある。同国が併合した東エルサレムの入植地を含めると、人口は44万人以上。入植地の約8割はパレスチナ人の私有地に建設されているとされる。

 米国などが03年に提示した新中東和平案(ロードマップ)は01年3月以降にできた入植地の撤去と、すべての入植活動の凍結を求めている。だが、西岸では約90の入植地が建設途上にあり、入植者数の増加率を年5・8%とするデータもある。

 入植地問題は国境画定に影響する。パレスチナは67年の第3次中東戦争以前の境界線を主張するが、イスラエルは西岸内の大規模入植地を自国側に取り込む意向だ。西岸の約90%を引き渡し、大規模入植地の接収分を他の土地と交換する方針を示している。パレスチナ人にとって反占領の象徴である難民帰還権問題での妥協も困難だ。国連によると、48年の第1次中東戦争で土地を追われたパレスチナ人とその子孫は06年現在で約440万人。暮らしていた家の鍵を保管し、故郷に戻る日を待ち望む人も多い。

 イスラエルは自国領への帰還を拒否しており、ブッシュ大統領も27日の演説でイスラエルを「ユダヤ人国家」と定義することで、これを事実上追認した。帰還権の放棄を求めたとも受け取られ、今後の交渉にしこりを残すのは必至だ。

 アッバス議長は今会議でも「東エルサレムが我々の首都」と強調した。イスラエルはエルサレム全域を「永遠不可分の首都」としているが、国際的には認められていない。連立政権内の一部右派政党は「エルサレムの分割が議題になれば政権離脱する」と圧力をかけており、オルメルト政権のアキレスけんになっている。

 ◇共同文書に不満、議長顧問が表明--パレスチナ

 【エルサレム前田英司】パレスチナ放送によると、パレスチナ自治政府のルデイネ議長顧問は28日、中東和平国際会議の共同文書について「『文書』などではなく(双方が)理解に達した内容に過ぎない」と不満をあらわにした。

 ブッシュ米大統領が会議の冒頭に読み上げた共同文書はA4用紙1枚足らずの長さ。パレスチナ側は当初、最終地位問題の詳細に踏み込んだ包括的な解決案を示す「共同宣言」を目指したが、イスラエルとの認識の溝は深く、徐々に「共同声明」「共同文書」などと表現は下方修正されていた。

毎日新聞 2007年11月29日 東京朝刊

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