少年法の改正により可能になる少年審判の傍聴は、犯罪被害者らの長年の要望に応え「少年の健全育成につながる」(自民党・少年法に関する小委員会)という効果も期待される。だが、加害少年の精神的幼さなどから懐疑的な声も強い。
「審判に被害者がいても、真の謝罪はできなかっただろう。非難されたりすれば、逆ギレしたかもしれない」。15~17歳に4度逮捕され、審判を受けた福岡市の男性会社員(24)は振り返る。
暴走族に属し、同世代の少年に大けがをさせたこともあった。更生したと感じたのは暴走族を抜け、就職してからだ。大人との付き合いを通して社会を知るようになり「審判の時の自分は本当に幼かった。今、やっと被害者たちに心から申し訳ないと思えるようになった」と明かす。
少年審判は「和やかな雰囲気で行い、内省を促す」とされ、通常は事件から間もない時期にある。審判廷は法廷に比べ極端に狭いが、法務省は「ビデオリンクなど間接的公開は想定していない」としている。
同法に詳しい沢登俊雄・国学院大名誉教授は「審判で少年の情報を開示するのは早すぎる。深い反省と謝罪を模索する気持ちが芽生えてからにすべきだ」と指摘。また、法制審について「出席する専門家が法案提出者の意見に従うだけという印象が強い」として、拙速な審議にくぎを刺す。
それでも、同法の厚い壁に阻まれてきた被害者の思いは切実だ。97年、27歳の息子を中学生5人の集団暴行で失った高谷孝子さん(62)=東京都=は加害者がだれかも分からないままだった。「ガラス越しでもいいから傍聴し、加害者がどんな家庭で育ち、息子がなぜ殺されたのかを知りたかった」と話す。
【川名壮志、坂本高志】
毎日新聞 2007年11月29日 19時01分