一昨年から国が積極的な勧奨を控えている日本脳炎のワクチン接種が、富山市を中心に
富山県内で急増している。子どもが対象年齢を過ぎる前に接種させたいとする保護者が増
えているためで、富山市では、今年四月から九月までに前年同期の四・五倍に当たる千九
百六十二人が接種した。市の委託を受ける病院からは「メーカーにワクチンの在庫がなく
、入手が困難なため、当分は接種は不可能」との声も聞かれる。
富山市保健所によると、二〇〇四年に山梨県の中学生が日本脳炎のワクチン接種後に急
性散在性脊髄(せきずい)炎(ADEM)を発症したことを受け、国は〇五年五月、ワク
チンと発症の因果関係を事実上認めたうえで、積極的に接種しないよう全国の自治体に勧
告した。その後、市内では昨年三月ごろまで、接種する子どもはほとんどいなかった。
ところが、昨年四月ごろからワクチン接種の希望者が現れ、九月までの半年間で四百三
十五人、今年三月までの一年間では千二百六十八人を数えた。接種者数は今年四月以降も
増え続け、九月までの半年で前年度一年間の一・五倍になった。現在も、接種対象となる
子どもの保護者から、月百五十件程度の希望が寄せられている。
高岡市でも、昨年度は全体で百三十一人だったが、今年度は十月までの段階でほぼ同数
の百二十七人が接種。魚津市では昨年度の二人から今年度は十月までに九十二人、射水市
でも昨年度の二十三人から今年度は九月までに五十八人と、接種者が急増している。
接種者の増加について、富山市保健所は、対象年齢の子どもを持つ保護者が「年齢が過
ぎる前に接種させたい」「より安全な新ワクチンが出るまで待てない」などの思いから接
種を申し込んでいると分析。「市としても保護者の気持ちを尊重し、希望に対応できるよ
うにしたい」としている。
一方、県内の小児科や総合病院の中には、品薄のためワクチンを入手できない病院も出
ている。富山市医師会の村上美也子理事(小児科医)は「ワクチンを常時、用意しておく
ことは難しいが、できる限り保護者の意向に添えるよう努めたい」と話している。