肥満の男性では前立腺癌(がん)の指標となるPSA(前立腺特異抗原)の血液中濃度が通常よりも低く、検査結果を調整する必要があることが知られている。この原因として、肥満男性は血液量が多いためにPSAが薄められている可能性が示され、米国医師会誌「JAMA」11月21日号で報告された。
前立腺癌基金(PCF)によると、米国では男性の6人に1人が前立腺癌に罹患し、そのほとんどが65歳以上だという。高齢男性の多くは定期的にPSA血液検査を受けているが、最近の研究から、過体重および肥満の男性のPSA値が正常体重の男性に比べて20〜25%低いことが明らかにされている。このため、体の大きな男性の場合、正常であると判断して1〜2年ないしそれ以上放置している間に癌が成長してしまう恐れがあるという。やせ過ぎであることによるPSA値への影響の有無は明らかにされていない。
米デューク大学(ノースカロライナ州)泌尿器・病理学助教授のStephen Freedland博士らによる今回の研究は、体の大きな男性のPSA値が低いのは、血液量が多いために抗原が希薄化されるためとの仮説を検証したもの。1988年から2006年の間に前立腺摘出を受けた前立腺癌患者1万4,000人について調べた結果、体重の多い男性ほど血液量も多いことが判明。希薄化によってPSA値の低下が生じるという理論が裏付けられたと研究グループは述べている。Freedland氏は、同じことがほかの癌の血液マーカーにも当てはまるとして、「血液検査を開発する際には、このことを念頭に置く必要がある」と指摘している。
一方、米マウントサイナイ医科大学(ニューヨーク)教授のNelson Stone氏は、この知見に対して懐疑的な見解を示している。今回の研究は進行前立腺癌の患者だけを対象としており、この点やその他の因子により結果が歪曲(わいきょく)されている可能性があると指摘。しかし、体の大きな人のPSA値がやせている人と同じではなく、PSA値評価の際には慎重に行う必要があることは同氏も認めている。
原文
[2007年11月20日/HealthDay News]
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