人口約四万人の備前市には、三つの市立病院があります。合併前の旧備前市、旧吉永、旧日生町が運営してきた病院がそのまま新市に引き継がれたからです。
岡山県内各地で合併協議が進められた二〇〇四年当時、三つの病院存続は全県的に注目されました。合併前の駆け込み建設が各地で相次ぐ中、日生、吉永の病院も合併前から建て替えが始まり、合併翌年の〇六年春に新病棟が完成しました。
そして今、議論されているのが市中心部の備前病院の建て替えです。老朽化が進んでいるのですが、三十―四十億円の改築費が見込まれ、めどは立っていません。
市財政は青息吐息。日生、吉永病院建て替え事業により新市に引き継がれた起債(借金)の残高が三十四億円もあり、収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率は県内ワーストです。
新たな“外圧”もあります。国が公表した公立病院の経営改善ガイドライン案では、病床利用率の低い施設は機能縮小が迫られるというのです。
地域医療を支えてきた全国の公立病院の多くが経営難にあえぎ、診療科の縮小なども起きています。備前市の三つの市立病院も医師、看護師不足に直面しています。
病院関係者は「岡山、赤穂の大規模病院に患者が流れている」と危機感を募らせています。備前病院にどんな機能を付加し、他の公立、民間を含めた東備地域全体の医療機関のネットワーク化を図るのか。財政のそろばん勘定の前に求められるのは、その青写真を描くことではないでしょうか。
(備前支局・二羽俊次)