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ダウンロード違法化などに7,500件の意見集まる、私的録音録画小委員会

「反対意見は消費者と権利者の溝の深さを象徴」津田大介氏

 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第14回会合が、28日に行なわれた。今回の会合では、これまでの議論をまとめた中間整理に対するパブリックコメントの結果を公表。集まった意見の8割は、違法サイトなどからダウンロードする行為を違法化することに関するものだったという。


パブコメの8割はダウンロード違法化、うち7割はテンプレートによる投稿

私的録音録画小委員会(写真は2007年第2回のもの)
 文化庁によれば、パブリックコメントでは約7,500件の意見が寄せられ、うち8割は「違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画」について、私的使用のための複製を認める著作権法第30条の適用範囲から除外することを懸念する意見だった。なお、このうち7割は、インターネット上で公開されているテンプレートを利用して投稿したものだったとしている。

 「違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画」は、海賊版や違法着うたサイト、ファイル交換ソフトなどを利用したダウンロード行為を指す。小委員会ではこの問題をめぐって、違法着うたサイトやファイル交換ソフトによって経済的不利益が生じているとする権利者側が、これらのサイトやサービスからのダウンロード行為を第30条の適用範囲から除外すべきであると主張していた。

 パブリックコメントにおいても、日本レコード協会は「拡大する音楽コンテンツの違法な流通を防止し、音楽産業の健全な発展を図るためには、違法音楽配信サイトからのダウンロードを著作権法第30条の適用範囲から除外し違法とするとともに、民間レベルでの広報・啓発活動及び学校における著作権教育を一層充実させ、ネットワーク環境に適合したITモラルの涵養(かんよう)を図ることが必要」として、第30条からの適用除外に賛成意見を寄せた。

 賛成派の意見としてはこのほか、音楽家などで構成される実演家著作隣接権センター(CPRA)が「違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を第30条の適用範囲にとどめた場合は補償金で対応することになるが、実態調査等で明らかな被害実態に照らせば、極めて莫大な補償金を想定しなければならず、現実的ではない」と主張。日本経済団体連合会(日本経団連)も、違法複製物かどうかが判断できる仕組みなどを導入した上で第30条の適用範囲から除外し、「権利者が権利を主張できるよう法律上の措置を講ずるべき」との意見を寄せている。


ストリーミングとダウンロードの違いがわかりにくい

 これに対して、反対派の意見は次のようなものだった。1)ダウンロードしたファイルが違法なものであるかどうかは、ダウンロードした後でなければ厳密にはわからない、2)ダウンロードした後でも、それが違法なものかどうかを区別するのは難しい、3)ユーザーがダウンロードした時点で違法サイトと承知していたかどうかを判定するのは難しい、4)管理されたサイトにのみ適法マークを与え、それ以外をすべて違法であるかのように扱うのはあまりに乱暴、5)曖昧な違法性の定義によって、一般ユーザーは常に「犯罪を犯す」リスクにさらされることになる。

 また、「YouTube」や「ニコニコ動画」などの動画共有サイトを含むストリーミング配信の視聴に関しては、一般にダウンロードを伴わないことから、中間整理では検討の対象外とされているが、この点については次のような意見が寄せられた。

 「ストリーミングとダウンロードは技術的に根本的な違いがあるわけではなく、両社を法律的に大きく意味の異なるのものとして取り扱うべきではない」「ストリーミングとダウンロードの違いがわかりづらく、無自覚で潜在的な違法行為者を増やしかねない」「法文にストリーミングは対象外と明記されない限り、映画の保護期間延長問題で文化庁の発言を裁判所がひっくり返したように、個々の裁判官判断がどうなるか不安である。専門的知識を持たない裁判官に違法と判断される可能性がある」。

 なお、賛成派でも反対派でもない慎重派の意見としては、日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合が、「中間報告の記述のみでは広範な分野に負の影響を及ぼす恐れが払拭されていない」として、リスク評価を含めた議論の継続を求めた。ポータルサイト提供事業者からも、「(法)改正後の影響があまりに広範囲に及ぶ上に、影響の度合いも深刻」として、拙速な結論を出すことに反対であるという意見が寄せられた。


ネット上の権利者批判、消費者の意見を無視すれば溝は深まるばかり

 28日に開かれた小委員会では、IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏が、ダウンロード違法化への反対意見が多数寄せられたことについて、「権利者と消費者の溝が深いことを象徴的に表わしている」と指摘。消費者の意見を無視して権利保護強化を進めれば、ますます両者の溝は深まるとして、ダウンロード違法化について十分な議論を尽くすべきであると訴えた。

 「インターネット上では、客観的に見ても権利者の人が叩かれている現状がある。わがままを何でも認めろというわけではないが、消費者はなぜ勝手にこういう話(ダウンロード違法化)になっているのかと怒っている。それを無視せずに議論をした上でダウンロード違法化が決まるのであれば納得できるが、現状では十分な議論がされたとは言いがたい。」

 一方、駒沢大学教授の苗村憲司氏は、「テンプレートによる意見とはいえ、たくさんの方が同じ意見を出したことは無視できない」と同意した上で、違法サイトからのダウンロードを私的複製の範囲内に含めるのであれば、違法サイトからのダウンロードに対する補償金も必要になると指摘。こうした状況を踏まえて、議論を進めていくべきと話した。


音楽・映像以外のコンテンツに対する違法ダウンロード規制の要望も

 このほか、第30条の適用除外とする範囲に関しては、ソフトウェアの権利保護活動を展開するビジネスソフトウェアアライアンス(BSA)が、「違法なソフトウェア複製物のダウンロード」についても、第30条の適用範囲から除外すべきと主張。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)や日本経団連も、「録音録画に限定せず、どのような著作物の私的ダウンロードが著作権法第30条から除外することがふさわしいか」について、一から議論すべきであると表明した。

 また、中間整理の総論については、日本記録メディア工業会や主婦連合会、インターネット先進ユーザーの会(MIAU)、個人から「何に対して補償が必要であるかについて合意が得られぬまま、闇雲に制度設計の議論を進めることは不適切」として、補償の必要性に関する議論が重要であるとする意見が寄せられた。

 補償の必要性の有無では、主に権利者団体が必要性を主張。日本民間放送連盟が「放送番組を一度でも録画されれば、放送番組の二次活用を行なうにあたり、正規品の購入や再放送の視聴が妨げられる」、日本音楽著作権協会(JASRAC)が「技術の発達により私的録音録画の実態が拡大した一方、補償金制度が十分に機能していない現状において、権利者が被っている経済的不利益は、制度導入時の受忍限度を大きく超えている」、CPRAが「コピーワンスの緩和に係わる合意は、利便性の確保と権利と保護のバランスについて、あくまで私的録音録画補償金制度による補償機能で解決することを前提として成立したもの」などとしている。

 これに対して、補償は不必要という意見は、個人や電子情報産業協会(JEITA)から寄せられた。「『経済的不利益』の面ばかりを強調するが、録音録画による複製は『強力な宣伝』にもなりうるのではないか」(複数の個人)、「同一生計に属する範囲の者のための購入CDの複製については、具体的不利益があるとは言えない。なお、購入CDのスペースシフト目的(複数のCDを同一機器に複製)の複製も同様である。また、タイムシフト目的での放送の録画についても、複製できなかったからといって当該放送内容と同一内容のDVDを必ず購入するとは考えがたく、損失を観念できない」(JEITA)。


権利者側は“iPod課金”を要求、メーカーと消費者は反対

 私的録音録画補償金制度における対象機器・記録媒体の範囲では、JASRACやCPRAなど複数の権利者団体が、「私的録音録画に供される機器・記録媒体は原則としてすべて補償の対象とする制度にすべき」と主張。さらに、日本映画製作者連盟は、ブルーレイディスクとHD-DVDを対象とし、iPodやテレビチューナー搭載PCなど「私的録音録画の用に供されることが前提となっているもの」は対象機器に加えるべきとした。

 その一方、JEITAや日本記録メディア工業会といったメーカー側や消費者からは、対象機器・記録媒体の範囲拡大に反対する意見が寄せられた。

 補償金の支払い義務者については、複数の権利者や消費者が、「補償金制度を導入している国のうち、我が国を除くすべての国が製造業者、輸入業者を支払義務者と定めている」ことを指摘。私的複製を実現する機器・記録媒体を販売して利益を上げていることなどから、メーカー側が負担すべきとする意見が寄せられたという。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会(第14回)の開催について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/kaisai/07111408.htm

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( 増田 覚 )
2007/11/28 18:09

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