現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事 敗訴でも「心は負けてない」 元慰安婦の戦い、映画に2007年11月28日15時03分 在日韓国人の元慰安婦、宋神道(ソン・シンド)さん(85)が国に謝罪を求めた裁判の記録映画「オレの心は負けてない」(安海龍(アン・ヘリョン)監督)が、12月1日から約1カ月間、東京・ポレポレ東中野で上映される。翻訳家で、宋さんと交流してきた「在日の慰安婦裁判を支える会」の梁澄子(ヤン・チンジャ)さん(50)=東京都国分寺市=が初プロデュースした。 宋さんは16歳のとき、植民地支配下の朝鮮半島から中国・武昌に連れて行かれた。初潮を迎える前だった。敗戦まで7年間、戦地を転々としながら軍人の性の相手をさせられた。終戦で日本に連れられて来た後は、宮城県内で過去を語ることなく、通名で暮らしていた。 梁さんが宋さんと知り合ったのは92年。宋さんの存在を知らせる情報が寄せられたことがきっかけだ。梁さんは当時、植民地支配の結果としての在日朝鮮人2世という自らの存在と重ね合わせて、慰安婦問題にかかわろうと考えていた。 そんな梁さんに、初めて会った宋さんは言葉を投げつけた。「おまえは朝鮮人か。オレは朝鮮人は嫌いだ」。疑心の固まりのようだった。 国に謝罪文の交付や国会での謝罪を求めて東京地裁に訴えたのは93年。東京高裁でも敗れたが、戦後補償裁判としては初めて明確に国際法上の国家責任が認められた。03年、最高裁は上告を棄却し、敗訴が確定した。 映画に描かれているのは、10年に及んだ裁判や各地での証言集会、祖国訪問を通じて、宋さんが心の傷を癒やしていくさまだ。言葉は一見乱暴だが、閉じこめていた悲しみがにじみ出てくる。 「はたいて泣くのと、心が感じて痛いのと、泣き方が違うんだ」「私はね、仏教とか南無妙法蓮華とか、くそとか、そんなの拝むよりわが心を拝むの。だまされるだけだまされたから」 今秋完成した映画を見返して、梁さんは振り返る。「私は初め、慰安婦『問題』しか見ていなかった。でも『問題』にカギ括弧をつけて考えている限り、何も見えない」。宋さんとの時間は、苦しみを背負わされた「人間」と向き合う過程だった。 各地で単発の上映会もある。問い合わせは、支える会(03・6324・5737)へ。
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