◇音楽は血液みたいに循環して日々生まれ変わるもの。
口下手そうで多くを語らない。
山崎さんにはそんなイメージがある。が、それは間違いだ。ユニークな比喩を織り交ぜつつ、軽快に語る人だった。音楽の話になると、ことさら饒舌になる。
山崎さんにとって、音楽とはズバリ、どんな存在なのだろう。
「血液みたいなもの……ですね。これ、我ながらいい例えかも(笑い)。血液は体を循環して栄養を運ぶものでしょう。音楽は僕の生活すべてのベースだし、なくてはならないものだから」
さらに、こう続けた。
「好きなことを趣味でやっている分には楽しいけれど、仕事にすると苦労が多い。でも、僕は音楽のおかげで救われているんです」
人は血液が流れていないと生きられない。つまり、音楽=生きることなのだろう。
「じゃあ、ライブは輸血ってことになるのかもしれない」
ふと思いついたようにつぶやき、照れくさそうに笑った。
アマチュア時代から、客とコミュニケーションをとる場所として、並々ならぬ思いでライブにのぞんできた。いまだにステージに立つと緊張と喜びが体内をかけめぐり、心拍数があがるそうだ。
「音楽って一人で聴くのもいいけど、人と共有したらもっと楽しくなると思うんです。同じ曲を聴きながら、踊ったり、歌ったりね。僕の血をあげるから、それぞれが吸収して自分の血や肉にしてくれたら最高だと思う」
ライブの定番である「晴男」は、観客と一体になりたくて作った曲という。いわば「輸血ソング」だ。
-僕らは境目のない空の下で出会い、いつも同じ空を見上げてる。泣いたり笑ったりしながら--
優しい内容の歌詞とレゲエ調のほんわかしたメロディーが心地いい。「がんばれ」と励ますのではなく「一緒に歌おう」と呼びかける。これが山崎スタイルなのだ。
12月で36歳になる。デビューから丸12年を迎えた。
「干支を一周したんだなと、しみじみ月日の経過を感じますね」
映画のサウンドトラックを作ったり、ほかのアーティストとユニットを組んだり。12年間は新たなことへの挑戦の連続だった。
血液は体内をめぐり、絶えず新しく生まれ変わるもの。いまこの瞬間を流れている血と同じ血は二度と流れない。同じように、山崎さんも「いまだからこそ生まれる音楽」を追求しているのだ。
「13年目はもちろん、この先も自分にやれることをやるだけ。年相応のことをね。そのうち演歌を作ってるかもしれませんよ(笑い)」
◇ ◇ ◇
やまざき・まさよし 71年滋賀県生まれ。95年「月明かりに照らされて」でデビュー。96年主演映画「月とキャベツ」の主題歌「One more chance One more time」のヒットで人気者に。ツアー「COVER HALL TOUR 2007」開催中。
◇山崎さんをささえるここちよい、ひと・もの・こと
オーダーメードのソファ
自宅で一番落ち着く場所は、オーダーメードしたソファの上という。「素材はコーデュロイで、幅は170センチくらいかな。ゆったり深く座れて居心地がいいんです。テレビを見たり、ギターを弾いたり、朝まで寝ちゃったり。ほとんどをここで過ごしています」。左は山崎さん直筆のイラスト。
「COVER ALL YO!」「COVER ALL HO!」
初のカバーアルバム、洋楽盤(YO!)と邦楽盤(HO!)を同時にリリース。洋楽にはエルトン・ジョン「Your Song」、ザ・ビートルズ「All My Loving」など不朽の名作を、邦楽には松田聖子「Sweet Memories」、堺正章「さらば恋人」をはじめ懐かしいポップスを中心に、10曲ずつ収録。各2800円(NAYUTAWAVE RECORDS)。
取材・文/高倉優子 写真/藤田修平 ヘア&メイク/三原結花(M-FLAGS) スタイリング/宮崎まどか
2007年11月22日
【おことわり】
タブロイド判の月刊生活情報紙「ここち」は2007年6月30日に創刊しました。原則として毎月最終土曜日、関東、東北の一部地域で毎日新聞販売店から朝刊とともにお配りしています。配布されない地域の方は、このウェブ版をお読みください。
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