2007年11月29日
◆ リサイクル馬鹿
「何でもかんでもリサイクルをしよう」という意見が良く出回っている。しかし、リサイクルをすると、かえって資源の無駄遣いになる、という例もある。
馬鹿のひとつ覚えのように「リサイクルをしよう」と提唱するより、「リサイクルをするとどうなるか」を科学的に考えるべきだ。口よりも頭を使うべきだ。
──
インクカートリッジのリサイクルが特許権(知的所有権)とのかねあいでできない、という判決が出た。そこで、次の見解が出た。
「だったらメーカーが自分でリサイクル商品を開発せよ。シャンプーなどだって自社でリサイクル商品を開発してるのだから、プリンタメーカーだってできるはずだ」
特許関係を考えるちょっと頭の非違人の意見である。で、朝日新聞は「なるほど」と思って、この見解を大々的に紙面に掲載した。顔写真付き。(朝日・朝刊 2007-11-29 )
しかし、こんなことをしても、まるきりの無駄である。そうすれば、リサイクルは可能だが、資源の節約にはならない。
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まず、基本を示そう。
インクカートリッジを再利用すれば、インクカートリッジ代を節約できるが、その額は、たかが知れている。たぶん、50円以下(30円?)だろう。ちっぽけなプラスチックと、ちっぽけなスポンジだけだ。百円ショップの百円容器に比べて、ずっと小さい。(百円ショップの商品も原価は 50円程度。)
要するに、インクカートリッジが高いのは、メーカーの利幅が上乗せされているからであって、原価が高いからではない。勘違いしてはならない。
だから、仮に再利用するとしたら、次のようになる。
・ インク代は毎回、百円以上安くなる。
・ プリンタ代はその分を上乗せして、数千円高くなる。
では、結果的に、どうなるか? 差し引きして考えよう。
・ カートリッジ代のうち再利用の分だけ 20円程度が安くなる。
(初回の分はかかる。)
・ リサイクル仕様カートリッジは高価なので、10円程度高くなる。
・ 詰め替えインクの容器代として10円程度高くなる。
差し引きして、トントンである。下手をすると、かえって高くなる。
──
以上は金額だが、資源についても同様である。
・ 資源のリサイクル効果はほとんどない。
(もともとは小さなプラスチックとスポンジだけだから。)
・ 詰め替え容器の方にも、かなり多くの資源が使われる。
・ 下手をしてインク詰まりを起こすと、プリンタ本体が無駄になる。
つまり、たとえうまく行っても、資源のリサイクル量はごく僅少である。
また、最後の点も重要だ。インクのリサイクルばかりに目をとらわれて、プリンタ本体が無駄になってしまったら、莫大な損失である。実際、詰め替えインクによってプリンタのインク詰まりを起こす人は、とても多い。
本末転倒。
──
一般的に、使い捨てというものは、必ずしも無駄ではない。たとえば、使い捨てのコンタクトレンズというものがあるが、必ずしも高額ではない。百回捨てるからといって、値段が百倍になるわけではない。
その意味で、「使い捨てにしなければ安上がり」ということにはならない。たとえば、使い捨てのコンタクトレンズを、使い捨てにしないで長期間使うと、目が病気になるので、医者に行くハメになり、とても高額の治療費がかかる。かえって無駄。下手をすると、目が使い物にならなくなるかもしれない。余計に払うべき代価は、金ではなく、目になってしまう。
──
以上からして、「インク・カートリッジの再使用」という形のリサイクルは無駄だ、とわかる。科学的に考えて、それが結論となる。
むやみやたらと「リサイクルを」と唱えれば、かえって資源や金の無駄遣いとなるのだ。
( ※ そもそも、ちっぽけなカートリッジを節約しても、たかが知れている、というのが本質的だ。さまざまな食品の包装で大量のプラスチックを浪費しているくせに、ごくちっぽけなカートリッジを節約しても、ほとんど意味がない。そもそも、インクカートリッジは、店頭で回収するリサイクルシステムがあるから、あまり無駄にはなっていない。ま、回収率は低いが、それだったら、「回収度を高めよう」と宣伝する方が、理に適っている。……日常で大量のプラスチックを浪費する人が、インクカートリッジだけを目の敵にしても、何の意味もない。さらには、「そうすればコストと価格が大幅に低下する」という妄想をいだくに至っては、何をかいわんや。)
さて。以上の話から、何が間違いかは、わかっただろう。
では、何もしなければいいのか? そうでもない。科学的に考えれば、別の形の資源節約法はある。これについて論じよう。
──
私の提案する資源の節約法は、次の通り。
(1) カラーインク
カラーインクについては、「詰め替えインク」を使っても差し支えない。別にインクが詰まるということもない。大幅にコストの低下が可能となる。
難点は、色が少し違っているので、カラーバランスが崩れる、ということだ。したがって、写真にはあまり向いていない。(ソフトやプリンタ設定でいくらか修正することは可能だが。) また、耐光性などの耐久性も悪い。
だから、写真には向いていないが、文字の修飾のためのカラー印刷ならば、問題ない。
というか、普通のビジネス文書では、モノクロ印刷だけがなされて、カラーインクはプリンタの起動のたびに無駄に消費されるだけだから、どんな色になろうと知ったことではない、ということが多い。
(2) ブラックインク
ブラックインクは、顔料があって、詰まりやすい。サンワサプライのブラックインクは、染料タイプらしいので、詰まりにくいが、その分、黒さが薄くて、灰色っぽい。また、長期間ほったらかしておくと、詰まることもあるようだ。
危険度が高いので、メーカー製のインクを使うことをお勧めする。私は詰め替えインク(ブラック)のせいで、3台も詰まらせてしまった。メーカー製のインクにしてからは皆無。
(ただし、インクを大量に使うときには、危険度を考慮しても、詰め替えの方がいいかもしれない。詰め替えインクでインク代を2万円節約すれば、プリンタが詰まっても元は取れる。……ただし、資源は無駄になる。また、プリンタを引き取ってもらう料金も。)
(3) ヘッド交換型インク・カートリッジ
ヘッド交換型のインクカートリッジを使うプリンタもある。インクを交換するたびに、ヘッドも交換するタイプ。(一番安価なタイプ)
これは、非常に無駄に見えるが、使い方によっては、ローコストで使える。というのは、カートリッジに自分でごりごりと穴をあけて、自分でインクを詰めてしまえばいいのだ。そこに詰め替えインクを入れる。
この場合、ときどき詰まるかもしれないが、だとしても、新品のインクカート十字を交えば、それで済む。詰まったヘッドは捨てて、新しい新品ヘッドを交うわけだ。ヘッドを容易に入手できるから、問題ない。
この方法は、最もローコストかつ安全であるが、加工技術みたいなものが必要になる。理系ではない人(工作好きではない人)には向かない。万人向けではない。
若い工作好きの人向け。(時間はあるが金のない人)
(4) ローコスト・プリンタ
そもそも根源的には、「詰まらないプリンタ」をつくってほしいものだ。
・ カラーはもともとない。モノクロ専用。
・ モノクロは大量のインクタンクが付いていて、ローコスト。
・ 耐久性などを犠牲にしたローコストインクも用意する。
(二種類のインクタンクを交換して使う。)
こういうローコスト・プリンタをつくってほしいですね。私はどうせモノクロ印刷をやるだけなんだから。……でもまあ、メーカーは、やりたがらないでしょうねえ。もうからなくなるから。
本当は、こっちの方こそ、問題なのだが。愚かな人々が「リサイクルをしよう」なんている馬鹿げたことを言い張っているから、肝心の問題点が消え失せてしまう。
【 参考 】
もっと実用的な、うまい方法もある。次項を参照。
→ インクの節約法
posted by 管理人 at 18:01
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| エネルギー・環境
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