内野聖陽さん、市川亀治郎さん、ガクトさん、そしてスタッフが綴る「風林火山」日記 大河三昧
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7月29日 美術進行 高橋秀樹チーフ

いつも現場の最前線で・・・

 セット、小道具、植木、メーク、衣裳、特殊効果など、収録に関わるすべてが集結したものが“美術”で、美術進行の仕事はその現場監督のようなものだと思っています。仕事を始めたばかりのころ、先輩から言われたのは『美術全般の知識を“広く浅く”』ということ。専門のスタッフがそれぞれの分野のものを深く掘り下げてくれますが、自分にも知識がなくては話が出来ませんからね。
 デザイナー、演出、各スタッフと打ち合わせしながら、ベストなものを作り上げていくのですが、時には自分が脚本や資料をもとに描いたイメージが、周りのスタッフとぴったり一致することがあって、そんな時はやっぱり嬉しいですね。

 最近では、Gackt(ガクト)さんの鎧(よろい)がそうでした。最後に着る鎧を決めた時、小道具も含めてすべてがガクトさんのこだわりや、イメージに合うものをスタッフが揃えてくれたんです。ご本人がすごく喜んでくれて一発オーケーでした。
 「風林火山」がスタートしたころの山本勘助の衣裳や道具も、スタッフの力が集結して出来たものです。内野聖陽さんが、勘助の出だしは諸国を遍歴しているのだから『とにかく汚いイメージにしたい』と言っていたんです。そこで各部門のスタッフみんなで、衣裳はぼろぼろにとか、メークやかつらはこうしようという工夫を話し合いました。また道具部のスタッフが、諸国を回っているのなら、日用品を持ち運ぶものがいるのではと、勘助が背負う鎧(よろい)びつを考え出してくれたのです。 内野さんが“躍動感”をとても大事になさる方なので、それに負けないように美術面での雰囲気も大切にしていきたいですね。

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7月22日 長尾景虎役 Gackt(ガクト)

僕なりのコミュニケーション手段

 僕の出演するシーンの撮影が本格的になってきたある日、長尾景虎の軍師・宇佐美定満役の緒形拳さんと初めてお会いした。緒形さんは、もともと大好きな役者さんだったが、今回の「風林火山」ではどんな演技をされるのか、正直想像がつかなかった。これまで緒形さんが出演された作品を見直してリハーサルに臨んだんだ。現場でも積極的に話しかけるようにしている。そうすることで、より相手のことがわかるし、さらに好きになっていくきっかけが見つかるから。何が面白いって、ずっとドキドキしながら仕事ができるって最高だよね。ハラハラじゃないんだよ。ドキドキ、ワクワクしながら現場にいられるっていうのが本当に幸せだと思う。

 緒形さんも共演を機に僕のCDをずっと車の中で聴いてくれていたそうだ。相手のことを知るための方法や、コミュニケーションの取り方というのはみんな同じなんだなって思ったね。  僕は仕事で出会う人たちとよく握手をする。それは一緒にものを作っていく仲間なんだという意思表示であり、相手に対する敬意でもある。
 「風林火山」の共演者やスタッフは僕よりキャリアのある人たちが多いから、とにかく学ばせてもらおう、盗ませてもらおうという気持ちが僕はすごく強い。教えてもらう側が相手に敬意をはらうのは当然だし、相手の意見に耳を傾けるのも当然だと思っている。すべてのスタッフ、共演者に対して、その思いは変わらないよ。

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7月15日 武田晴信役 市川亀治郎

舞台はハードだけれど健康的!?

 6月に福岡の博多座で行った「NINAGAWA十二夜」の公演が終わり、久しぶりに「風林火山」のスタジオに戻ってきました。と言っても引き続き7月の1か月間は東京の歌舞伎座で「NINAGAWA十二夜」の舞台に立っています。演目は同じでも、やはり土地によってお客様の空気がまったく違うところが面白いですね。関西の色、関東の色、九州の色と如実に分かれていて、東京で受けるものが関西で受けないとか、その逆もある。そこが舞台の楽しさです。

 ただ、はっきり言って体力的にはかなりきついですよ。6月、7月の福岡と東京は合わせると78公演ですからね。人間業じゃないって、よく言われます(笑)。こればかりは小さいころからの鍛錬のたまもの。しかも1日のうちに4役や5役を演じることは歌舞伎では当たり前。10分くらいで次の人格にならないといけないのだから、集中なんて言ってる場合じゃないですね(笑)。
 だからテレビの仕事が続くと自然とやせてきてしまいます。舞台より楽だから逆だろうと思われがちですが、実はそうじゃない。歌舞伎ほど動かないので食べる量も減ってくるし、たぶん吸収も悪くなるんでしょうね。ある意味、不健康な生活になってしまうんです。
 「風林火山」はこれから後半の見せ場である川中島の合戦のロケも控えています。歌舞伎座の舞台が終わった翌日からロケに行くことになりそうなので、乗馬のけいこをする時間はないでしょうね。でも晴信は大将だから大丈夫!本陣に座していることが多いんです(笑)。ロケはみんなと一緒に行けるから楽しみです。

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7月10日 山本勘助役 内野聖陽

夢も反省も・・・一冊のノートに

 日記というほど毎日ではないけれど、僕もつれづれなるままに、いろんな思いをノートに書き連ねたりしている。とくに今回の「風林火山」のような大きな仕事に入る前は、その仕事をどんなものにしていきたいかという欲望や夢をつらつらと書いてみたりする。いざ仕事が始まると一気呵成に突き進んでしまい、そんなもの見直しているひまはないんだけどね(笑)。結局、文字にすることで自分の心を整理するということなんだと思う。

 ほかにも、『この気持ちは最後まで忘れたくない』とか、『オレはこういう部分が弱いなー』といった仕事への思いがふくらんだ時は、いきなり筆ペンを出して大学ノートに書き始めている(笑)。自己流だけど、筆ペンの字って好きなんだよ。日記のように毎日、書かなくちゃと思うと絶対続かないから、思いついた時だけ書いている“夢ノート”であり、“反省ノート”と言えるかな。もう何冊かたまっているけど、そんなもの人には見せられないよ。自分の心の思いだからね。
 どんなお芝居の演技でも、魂で演じているものは“その年齢の、その時期の、その人”にしか出せないものなんだよね。だからこそ、その時精一杯やった真実を焼き付けたいという思いで、毎日の現場にこだわっているつもりなんだ。それでも『ああ、クソーッ・・・』みたいな歯ぎしりの日もある(笑)。そんな時、その思いをノートにつらつらと書いているというわけです。

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7月4日 メーク 仲原 功チーフ

徐々に大人になっていく表情を・・・

 「風林火山」の出演者のメークは3人1組のチームで担当しています。最初に役柄に合わせて担当を決めたら、あとはそれぞれに任せています。みんな自分が担当する人物の役柄、年齢、物語の進行などを考えて顔づくりの計画を立てていますからね。

 僕は武田晴信の市川亀治郎さんや飯富虎昌の金田明夫さん、由布姫の柴本幸さんなどのメークを担当しています。晴信が初めてドラマに登場したのは10代でした。まだ家督を継ぐ前だったので、まゆをあまりつくらず自然な形にするなど若さを強調しました。20代前半で父親の信虎を追放して武田家の当主になったころと、同じ20代でも諏訪を治めたころとでは、やはりメークも変化させて、徐々に大人になっていく感じをつくっています。
 時には、亀治郎さんのほうから『ここをこうしたい』といった具体的な案を出されることもあります。亀治郎さんは歌舞伎で立ち役も女形もされていて、メークのこともよくご存知ですからね。舞台とテレビでは細かい部分で違いもありますが、やはり亀治郎さんの考えていらっしゃる部分も取り入れて、僕のやり方とミックスさせる。そんなアレンジも必要です。
 こうした全体の計画以外に、シーンの状況、セリフの内容に応じた細かな表現も工夫しますね。顔のアイシャドーに青色を混ぜることで冷たい印象や涼しげな印象を与えるような表情をつくってみたり、やはり役者さんが演じやすいようにということを心がけます。
 大河ドラマの収録は1年以上にわたり、その間は常にメークのことだけを考えているような状態です。チームのメンバーがいい仕事をしているのを見ると嬉しいけれど、番組が終わるまで気が抜けないといったところです。
 ただ週末になると趣味の野菜づくりに精を出すことでリフレッシュしています。菜園を借りているのですが、そこで畑をながめているだけでも心安らぐ感じですね。そうしてまた新鮮な気持ちでスタジオに入っています。

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