内野聖陽さん、市川亀治郎さん、ガクトさん、そしてスタッフが綴る「風林火山」日記 大河三昧
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6月24日 長尾景虎役 Gackt(ガクト)

スタッフは一緒にものを作るファミリー

 大河のスタジオに入って僕が大事にしているのはスタッフとのコミュニケーションだ。ドラマは僕ら演じる人間だけで作るものではなく、スタッフも含めてみんなで一緒に作っているもの。収録の合間に声をかけて、いろんな話をするのも、みんなで作っているという感覚を、一つ一つのタイミングで確認したいから。NHKはレベルの高いスタッフが集まっているから、話をしていても本当に楽しい。

 この間も、大河史上記録に残ると言われたほど収録が押してしまったことがあった。長時間にわたる撮影は確かにきつかった。だけど僕に言わせればスタッフの方がもっときついんだよ。それなのに誰1人として『きつい』なんて顔を見せずに頑張っている。そこで僕ら演者がグチなんて言えないし、もちろん言うつもりもない。それより、そんな彼らの気持ちに応えたいと思うから、絶対に手を抜けないんだよ。
 そんな話をしていたら、あるスタッフから『そういう気持ちがひしひしと伝わってくるから、自分たちはやる気が出る』みたいなことを言われたんだ。その時は、やっぱり嬉しかった。今まで音楽に対しても同じようにやってきたけれど、自分の考え方や姿勢は間違っていなかったと、確認できた瞬間だったし、だからこそより一層頑張ろうっていう気持ちになった。
 景虎というキャラクターは“孤高”だけれど、もし僕が収録中も1人で考え込んだりしていたら、スタッフとの距離はどんどん開いてしまうし、ギスギスした空気が流れてしまう。僕はファミリーをすごく大切にしたいという気持ちがあるから、やっぱりスタッフとのコミュニケーションをとるのは自然なことだし、これからも続けていきたいと思っている。
 それが僕のやり方であり、生き方である。

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6月19日 武田晴信役 市川亀治郎

“晴信&駒井”は常にセットで(笑)

 最初のころは、あまり共演者のみなさんとお話する機会がなかったのですが、いまは収録中に『はい、カット』の声がかかった瞬間、おしゃべりしているなんてことがよくあります(笑)。もう話が止まらない。まさに機関銃トーク。
 大井夫人を演じる風吹ジュンさんは、お好きな中国茶の話をよくしてくれます。すごく優しく接してくださって、本当の親子のような会話になっていますね。勘助役の内野聖陽さんとは、やっぱり演技の話になることが多いけれど、食事に行くならどこの店がいいといった気軽な話題になることもあります。  そんな中で、晴信の側近・駒井政武を演じている高橋一生くんとは本当にいつも一緒にいて、芝居のことから食べ物のことまで、ありとあらゆる話をしています。いまや、“晴信・駒井”のように、“亀治郎と高橋くん”も切っても切れない関係(笑)。放送でも、駒井が今川と北条の和睦の使者になったり、これから『甲州法度』を作ったりと晴信のために大活躍するので、まさに公私共に頑張ってくれているという感じです。

 晴信がまだ“うつけ者”と思われていたころから側にいたのが板垣信方と駒井ですが、駒井とは主従でありながら兄弟のような感覚もありますね。板垣はやがて戦死してしまうので、そうなると駒井だけが昔からの晴信を知る唯一の人物ということになるわけです。
 役柄とリンクするのですが、僕にとっても高橋くんはお話し相手として『いてもらわないと困る存在』(笑)。それなのに最近は収録が一緒になることが少なくて、すごく残念。スケジュール担当スタッフにお願いして、僕の出番がある時は“しゃべり担当”という役名で高橋くんのスケジュールを押さえてもらいたいぐらいです。休憩時間はとくに◎ですね。高橋くんの収録がなくても、ご飯だけ食べに来てくれないかな(笑)。

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6月10日 山本勘助役 内野聖陽

大河撮影中の
リフレッシュ法、いろいろ

 「風林火山」の収録スケジュールは月曜日にリハーサルを行い、火曜日から金曜日の4日間が本番というのが基本。この収録は台本どおり、順を追って撮影するなんてことはまずないですね。ことに大河ドラマの場合、スタジオのセットも大がかりだし出演人数も多いから、出来る限り効率よくスケジュールが組まれています。
 たとえば甲斐の躑躅ヶ崎館に武田家の重臣が集うシーンがあれば、数話分の館のシーンをまとめて撮るので、その週は毎日毎日、軍議のお芝居で座りっぱなしなんてこともよくあります。こういう時の役者の仕事は、筋肉を伸縮させるスポーツマンとまったく違い、気だけ張りつめ精神を集中させるので、時にとても血の巡りが悪くなります。こんな収録の多い週の最大のリフレッシュ法は、スポーツジムに行って思いっきり汗をかいたり、有酸素運動をすることですね。

 天気のいい日に空気のうまいところに行くのもいいですよね。そう、乗馬の訓練も大河撮影中の大きなリフレッシュ法の一つ。馬と一体になって、風を切って走っていると、俺ってやっぱり全身派だなって思いますね。空気のうまいところで汗をかいて頑張るのはいいね。
 これから、いよいよ後半戦に向けて大河は盛り上がっていきます。僕も最高のコンディションでこの濃厚な人間たちの熱いドラマを引っ張って行きたいと思いますので、皆さん、どうぞ期待して応援してください。

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6月3日 美術 青木聖和 専任ディレクター

季節感、生活感をさりげなく・・・

 「風林火山」の美術を担当することになった時、とても感慨深いものがありました。それというのも僕がNHKに入局した年の大河が「武田信玄」で、研修でスタジオに入るなど思い出のある作品だったからです。
 また、僕は岐阜県の出身で、山梨県、長野県と同じように三方を山に囲まれた海のない地域で育ちました。日常、見渡す風景が山と川でしたから、今でも山を見ると気持ちが落ち着くほど。それだけに「風林火山」の取材やロケで山梨や長野を訪れた時に、まったく違和感なくすんなりと入っていくことが出来たんです。

 台本という活字情報をどう映像化していくのかを考えるのが、ドラマ制作における“美術”の役割です。建物や自然のセット、衣裳、小道具など、視覚的なものはすべて含まれますが、その中で今回特に大切にしているのが季節の表現です。たとえば雪山をさまよう勘助の姿から厳しい寒さを感じ取っていただければ、より勘助や由布姫に感情移入することができると思うからです。風に揺れる笹の葉、舞い散る粉雪、凍りつきそうなせせらぎなど、いかに寒さを感じていただくかということに工夫をこらすなど、季節感を自然に出していくことに力を注いでいます。
 そしてもう一つ、僕が時代劇をやる時に『これだけはやってみたい』と思っていたのが“木の質感”を出すことでした。当時の人々が、暮らしの中で手をふれたり、歩いたりした時の感触を、実際に役者さんに感じてもらいたかったのです。そこで床板にはプリント合板ではなく杉の丸太をかつらむきにしたものを張った板を使いました。その上を素足で歩くと、場所によって木目が違ったり、年輪を感じたりすることができるはずです。また、ぽんと床に置かれた書状がアップで映し出された時にも、自然素材ならではの表情が出るのではないでしょうか。もちろん季節感と同様、木の質感も主張しすぎることなく、あくまで“さりげなく”が前提ですが。

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