女たちの風林火山 戦国の乱世は武将たちだけが戦っていたわけではありません。女性たちもまた懸命にそれぞれの運命を生き抜き、戦っていました。
ヒサ・水川あさみ

 若いころのヒサは、女らしいというよりはちょっと少年っぽいところがありましたよね。言いたいことがあれば、はっきりと口にしていましたし、武田への恨みを晴らすという平蔵にハッパをかけたりしていましたから。

 でも、平蔵との結婚を許され、父上(矢崎十吾郎)が亡くなったころから、ヒサの意識も少しずつ変わっていったんだと思います。年齢を重ねて気持ちも落ち着いてきたうえに、子どもも生まれて『自分には守るものがある』『この平穏な暮らしを大事にしたい』って。
 ただ前回の収録では、まだ『平蔵!』と乱暴に呼んでいたのに、1か月ぶりの収録ではヒサが平蔵を立てて女らしくなっていたので、最初はちょっとびっくりしました(笑)。でも嫁になるということ、結婚してからの立場の変化をヒサは十分にわかっていたということですよね。だから私も自然に演じることができました。

 平蔵に対する思いは結婚した今も出会った当時と変わっていないですね。あの一目ぼれしたころの延長線上にあるんだと思います。平蔵の何事に対しても熱いところ、一生懸命なところが大好きで、でもだからこそ、戦に送り出すことが不安で仕方なくなってくる。『死なないで戻ってきてほしい』というヒサの思いが演じていても切ないほど伝わってきます。本当に、ヒサには幸せになってほしいですね。

彼女たちの思い 
身分違いの恋を成就させ、平蔵と夫婦になったヒサ。諏訪の地を追われ、逆境を乗り越えた今は平穏な家庭を望むようになった。一方、真田家の素っ破として活躍する葉月は、伝兵衛の思いがけない結婚の申し込みにとまどいつつも…。結婚が2人に及ぼした影響などを水川あさみさん、真瀬樹里さんに聞いてみた。
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葉月・真瀬樹里

 葉月は真田の殿様が大好きだったと思います。苦境の中から自分を救ってくれた恩人というだけでなく、人間として尊敬もしていたし、どこか男性としてほれていた部分もあったかも知れません。でも、奥方様(忍芽)も葉月のあこがれの存在。だから一生、真田家のために働く“素っ破”という忍びの生き方を全うするつもりでした。
 戦国時代に忍びとして生きるというのは、女性としてはかなり切ない生き方だったかも知れません。でも、当時の女性の多くが夫や息子を『信じて待つ』ことしかできなかった中で、葉月は自ら動いて前線に出て行けた。身分は低くても男と同じように、自分の信じる道を生きていけた。そういう意味では、影の存在でありながら輝く生き方をしていたし、自らを疑うことなく誇りを持って生きていたんだと思います。

 ときには忍びという任務のために“女性”を利用することがあっても、そのことに抵抗も感じていない。むしろ本来の意味での“女性”という部分は捨てて、あくまで手段の一つだと割り切っていました。それなのに、そのことを、いきなり伝兵衛から非難されたときには、すごくとまどったでしょうね。自分のことを1人の女性として見ている人がいる。そんなこと考えてみたこともなかったと思うんですよ。何か強い力でグイッと1人の女性に戻されたような一瞬だったのではないかしら。

 伝兵衛は、人間として女性として初めて葉月の手を取ってくれた人。だから迷いはなかったんじゃないかな。有薗芳記さんが本当にまっすぐ伝兵衛を演じられていたので、ああいうふうにストレートに強く気持ちをぶつけられたら一発で落ちてしまう気持ちもわかるなって、ちょっと思いました(笑)。

身上調査〈ヒサ・葉月〉
彼女たちの思い
衣裳比べ
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