外国人生徒への日本語学習支援
公明新聞:2007年11月28日
多文化共生社会へ一歩前進
「現場」との連携深め総合施策を
自治体任せを“改心”
遅ればせながら、の感は否めないが、一歩前進ではある。運用面に気を配りながら、実効性ある支援へとつなげてほしい。
全国の小・中・高の公立学校で学ぶ外国人児童生徒に対し、文部科学省が日本語習得の支援に乗り出す方針を固めた。これまでの自治体任せの姿勢を改めるもので、多文化・多民族共生社会への新たな一歩を記す施策でもある。児童生徒の保護者や外国人集住都市関係者、市民団体メンバーらとともに歓迎、評価したい。
文科省の説明によると、新規事業の予算規模は19億6000万円で、来年度概算要求に計上した。自治体が日本語、外国語双方に堪能な非常勤講師を雇用できるよう財政支援し、授業の通訳や日本語指導教室の拡充などを目指す。
具体的な方策については、同省内に設けられた「初等中等教育における外国人児童生徒教育充実のための検討会」などで検討されているが、当面の目標としては、来年度中に全国に約1600人の非常勤教員を配置する考えのようだ。これだけの教員が新たに確保されれば、日本語指導の現場は大きく改善されるにちがいない。
問題は、その1600人をどう確保するかだ。カネだけ出して、あとは現場に“丸投げ”では困る。文科省はこの際、自治体や経済界、教育機関、市民グループなどと協力して、人材発掘から教師養成、教育プログラムの開発・普及に至るまで、総合的な支援体制づくりに着手してはどうか。併せて、教室・教材の確保、子どもたちに対する学校生活への適応指導、小・中・高校における外国人児童生徒受け入れ態勢の整備などにも本格的に取り組むべきだ。
文科省の調査によると、2006年5月現在、全国の小・中・高公立学校に通う外国人児童生徒は7万936人を数える。このうち、日本語がわからず、授業についていけない「日本語指導の必要な児童生徒在籍数」は、5475校2万2413人。前年の2万692人に比べて8.3%増、前々年の1万9678人比13.9%増と、年々増加している。
背景にあるのは、1989年の出入国管理法改正で日系人家族らの就労が自由化され、ブラジルなど南米からの入国者が激増したことだ。実際、外国人児童生徒の母語別内訳は、ポルトガル語8633人(38%)、スペイン語3279人(15%)と、南米系の言語で全体の5割以上を占めている。
これらの児童生徒の中には、日本語を話せないため授業を理解できないばかりか、いじめを受け、不就学になったり非行に走ったりする事例も少なくない。コミュニケーション言語としての日本語理解の促進は、こうした事態の改善に大きな効果が期待できる。
異文化との触れ合い
それ以上に大きな意味があるのは、中長期的な効果だ。
劇作家・演出家の平田オリザ氏は、「日本語学習支援とは異文化との触れ合い」であり、「この触れ合いがあって、初めて自分たちの文化がわかる」と言う。日本語も母語も話せる外国籍の子どもが増えることは、そのまま多文化・多民族共生社会の構築への歩みに直結しているということだろう。外国籍の子どもたちへの学習支援は、日本と外国とを結ぶ「文化の懸け橋」を将来にわたり建設してゆく作業である、と自覚したい。
公明党も、党の総力を挙げて取り組む方針である。
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