「風林火山」に出演するまで、この時代の女性はどちらかといえば“控えめ”というイメージがありました。ところがリツは自分の思ったことを自分の言葉ではっきりと話すことができる女性なんです。台本を読んだときは少し驚きましたが、同時にスカッとしました(笑)。ある意味、現代的なので気持ちも理解しやすし、こういう女性を演じられてうれしいなと思いました。勘助に向かって『興味を持って慕っております』なんて、自分の思いをはっきり言葉にして伝えて、そのたびに勘助がたじたじとなる(笑)。そんな場面も楽しいですね。 ただ、リツがどれほど意志が強く自分の意見を持っている女性だとしても、結婚まで自分で決められるわけではないですよね。もともと勘助のことは父親である原虎胤から命じられたことで、それはお屋形様の思いを反映した結婚話だったわけです。一見、自由奔放なようですが、家と家の結びつきなどもきちんと理解して、親の命は絶対として従っていた。そこがやはり現代女性とは違うところでしょうね。 親から一方的に決められる結婚というと不幸なようですが、リツの場合は恵まれていたんです。もともと父親から、勘助が戦う様子などを聞いてすごく興味を持っていましたから。セリフにもありましたが、『お屋形様が心をかけている。そういう方であるなら楽しみ』『それなら大丈夫』って本当に思っていたんだと思います。かねてから興味を持ち、話をしてみたいと思っていた人との結婚話ですから、イヤだという気持ちはまったくなかったと思います。 残念ながら(笑)、最終的には勘助の奥さんではなく養女ということになりましたけどね。
大河ドラマは「葵〜徳川三代」で、ほんの2、3シーンに出演させていただいたことはあったのですが、今回のように本格的に出させていただくのは初めてなので入る前はすごく心配でした。大河の雰囲気ってどうなんだろう。やっぱり皆さん、すごく真面目でストイックな感じなのかなとか、勝手にいろんなことをイメージしていました。でも、いざ現場に入ったら、すごく明るくて雰囲気も和やかでホッとしました。 内野聖陽さんにも、ずいぶん助けていただきました。途中からの参加ということもあり緊張してしまって、セリフのやりとりをしていてもうまく距離感がつかめなかったんです。もう少し、近づいてもいいのかな、それとも・・・みたいな感じで。そんなとき、内野さんが、いろいろアドバイスをしてくださって一緒に2人の距離をつくっていくことができたんです。初日の収録が終わったとき、『これで勘助とリツのイメージがつかめたよね』って言ってくださったのがうれしかったですね。 リツを演じるうえで、衣装に助けられたところもあるんですよ。スタッフの方が衣装合わせの段階から「リツの性格に合ったものにしようね」と言って考えてくれたのが、オレンジ色の着物だったんです。最初の登場のころ、この衣装を着ることでリツのイメージがぱーっとわいてくるような感じがして、とても助けられました。 所作は難しいです(笑)。打ち掛けのさばきなどはないけれど、リツの場合は、てきぱきとした動きが必要なのに、気を抜くとついゆったりとした動作になってしまう。意識しつつ、でも所作にばかり気を取られてリツのセリフや心情がおろそかになってもいけなし。両方をしっかりと演じなくてはいけないなと思っています。