

内野 勘助にとって由布姫は『あなたがいるから明日がある』じゃないけど、生きる支えであり、心のよりどころだったんだよね。由布姫を失ったことで、そのよりどころが揺らぎ、明日を生きていく自信がなくなってしまったという感じじゃないかな。ただ、それで放浪の旅に出るというのが、一国の参謀としては許されるのかなって気はしますけどね(笑)。
ガクト 僕を含めて、すべて世の中の人間はそれぞれの立場というものがあるよね。景虎も高野山に行ったからといって“越後の国主”という立場から逃れられるわけじゃないんだよ。だけど彼の中には『これはプライベートだから』っていう意識がある。それはやっぱり甘いよね。自分は国主の座を捨てることができたと思っているかも知れないけど、周りは誰もそうは思っていない。だから、よけいにいらだつし、怒りが生まれてくるわけ。そういう状況になるのは、明らかに心が弱いときなんだよね。

内野 高野山の再会は、“信玄と景虎”ならぬ“勘助と景虎”の一騎打ちですかね(笑)。でも勘助は戦う気なんてさらさらなかったんですよ。刺客と勘違いされて大立ち回りになってしまったけれど、誤解を解くために必死。景虎が息巻いて向かってくるから、やむを得ずという気持ちで戦っていたんです。
ガクト 勘助を見て瞬間的に怒りをむけたのは景虎の弱さの現れだね。子どもの部分がそのまま出てしまったというだけ。勘助は途中までは大人の態度なんだけど、途中からキレてしまって子どもの部分が出始める(笑)。あれは、2人が自分の抱えているものをはき出すための戦いで、それが戦国時代だったから刀で斬り合う形になってしまった。

内野 やっぱりガクトさんはご自分で体を鍛えているだけあって動きがいいんですよ。それほど立ち回りの経験はないだろうと思うのに、すごくセンスがいい人だなって。立ち回りって慣れないうちは力が入りがちなんですよ。だけど力を抜かないと危険だし、ダイナミックなものにはならない。そういうことを彼はすぐに吸収してしまうんです。運動神経もいい人なんだなって思いましたね。
ガクト 立ち回りはイケてると思うよ。カッコよくなるように2人でいろいろ考えて何度もテストして、面白いことができたと思う。これは見てのお楽しみだね。だけど、かなりイケてると思うよ。

内野 あれは小学生みたい。担任の教師に叱られた・・・みたいな(笑)。
ガクト 叱られた子どもだよね、ホントに(笑)。

内野 「おぬしのせいで朝食もまずいわぃ」みたいな顔して2人で食ってね(笑)。しかし、お互いに好敵手だと認め合うことができた時間でもあったんじゃないかな。そのうえで、やっぱりここは場外であってリングじゃない。ゆくゆくはリングの上で戦うぞっていう気持ちになったということでね。川中島に向けて闘志を燃やしていくぞというところですね。
ガクト 食事のシーンは、お前のせいで怒られた、みたいな感じだよね(笑)。景虎にとっては、軍神として弱い部分を切り捨てるというか、覚悟を決めた瞬間だった気がする。このドラマの中では、勘助と晴信の存在が、景虎から人間の心の弱さみたいなものを払拭するきっかけになっているし、越後の国主となる志にさらに拍車をかけているのも彼ら。まさに、景虎にとってなくてはならない人たちだね。