インタビュー 上杉憲政役・市川左團次 “御身大事”な姿に憲政の人間味が・・・

敵役に近い役どころが楽しい

 上杉憲政のことは全然知らなかったんですよ。最初の稽古(けいこ)でプロデューサーの方が『今回、この中で一番偉い人物なんです』とおっしゃったので、『おお、そうか、そうか』って(笑)。
 しかし、関東管領も今や風前のともし火(笑)。北条氏康に追いつめられ、ついに越後まで逃げてしまいました。自分の家が大事というか、突き詰めていえば“御身大事”だったんでしょう。もちろん援軍を得て引き返すつもりで、息子の竜若丸を残してきたのに、家臣の裏切りで息子が悲惨な最期を遂げてしまった。それを知ったときの父親としての悲しみは深かったと思います。
 ただ、問題はこのあとです(笑)。またもや酒宴に明け暮れ、女性と戯れているシーンが出てくる。そのへんはどうかなと思うんですけどね(笑)。もう、すんでしまったことは仕方がない。先へいってしまおうみたいな感じかもしれません。
 ある意味、非常に人間味あふれた人物だということでしょう。僕は本業の歌舞伎でも、どちらかというと敵役を演じることが多いけれど、そういうはっきりした役どころは、やりやすいと言えばやりやすい。演じていても楽しいですよ。

テレビと歌舞伎、いい形で芝居ができれば・・・

 歌舞伎には演出家という人がいないんですよ。たいがい主役になる人が演出家を兼ねています。テレビに出させていただくときも、まったく役をつくらないというとウソになるけど、わりあい素の状態で臨むことが多いですね。そして稽古なり本番のときに、その場の状況で気持ちを出すようにしています。そこで演出家の方の意に添わないようであれば『こうしてください』とか、『ああしてください』というご注意が飛んでくるわけでしょう。それに添ってやればいいかなという感じですね。
 歌舞伎の大先輩には、ずいぶんテレビや映画に、お出になっている方が多いんですよ。そういう方たちのお芝居を見ていると、肩ひじを張ったところがなく、どこにも力が入っていない感じでなさっていて、その場に溶け込んでいる。それでいて、当たり前のことだし、大先輩に失礼な言い方になってしまうけれど、歌舞伎に出ていらっしゃるときは歌舞伎役者そのもの。そんなふうに、テレビも歌舞伎もそれぞれに応じた芝居ができるというのが本当の役者なんでしょうね。僕なんか、まだまだです。
 ただ、歌舞伎のいろんな方がテレビに出るようになったことで、歌舞伎を見に来てくださる若い方がずいぶん増えています。だから、僕もこんなふうにテレビに出させていただくのはありがたいですね。

 
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