大河ドラマに出演するのは初めてなのですが、上田原合戦のロケに参加したときは楽しかったですね。長野県の牧場でロケをしたのですが、現場についたらさまざまな軍旗がはためき合っていて、それを見ただけで胸が躍りました。真田の家紋である六連銭の兜(かぶと)をかぶり、馬で戦うというのが“ちゃんばらごっこ”みたいな感じで楽しいんですよ(笑)。もっとも、あのときは2シーンだけだったから体力的にもまだ大丈夫だったのですが、クライマックスとなる川中島のロケは大変かもしれませんねぇ(笑)。でも、やりがいはあります! 真田幸隆は、脚本に描かれているように“わが郷、わが領民、そして家族”をとても愛した人物です。妻や子どもに対する思いというのは想像の範囲ですが、家臣や領民、さらに領地に対する思いというのは、なかなか想像し難いものがありますね。とてつもなく大きなものを背負っているんだろうなぁと。 撮影に入る前に上田市にある真田の郷を訪ねてみたんですよ。実在の人物なので、真田家のお墓参りをしたり、その土地の空気にふれることで、何かヒントが得られればいいなという思いからでした。 ドラマの前半で真田の郷を追われるシーンがありました。家臣たちに別れを告げるとき『生き延びよ』と言うセリフがあったのですが、あの当時にしては貴重な言葉だったと思います。実際、幸隆と家臣たちとの松尾城での再会シーンの撮影は、とてもドラマチックだったし、感慨深かったですね。あのとき、幸隆という人物の思いが少し実感できたような気がします。
このドラマでは、ずっと『戦の勝ち負けだけではない。何を信じて生きていくのか』ということを問われているような気がします。その中で幸隆は、家を守り、領地を守ることをとても大切にしている。家臣、領民、そして一番身近な妻の忍芽と子どもたちを愛し、みんな一緒に生きていきたいと。そのために働くという強い信念を感じます。そのゆるぎなさが、この先、昌幸、幸村と真田一族が続いていった礎になったと思いますね。ただ、それは幸隆が1人ではなかったから、忍芽や子どもたちがいたからこそ、なし得たことです。 ドラマでは、山本勘助や相木市兵衛などと軍議や戦の話をしているときに、忍芽や子どもたちが同席していることも多いですね。それだけ幸隆は妻を信頼しているということだと思います。 忍芽も真田家の人間として子どもたちの教育をとても考えているんですね。毅然とした強い女性であり、大きな女性だと思います。忍芽が子どもと一緒に命を賭(と)して常田隆永のところに向かうシーンがありました。彼らが無事、戻ってきたとき『そなたを失っては、わしが生きてゆけぬ』と言う幸隆のセリフがありましたが、演じていて本当にかけがえのない存在だったことを実感しました。