インタビュー 宇佐美定満役・緒形拳 毘沙門天の化身、景虎とともに

武将にはあるまじき柔らかさを

 今年の大河ドラマは、上杉謙信役にガクト(Gackt)さんがキャスティングされたことで、新しい「風林火山」としてどう描かれていくのか、特に興味を持って見ていたんです。そのガクトさん演じる景虎を支える軍師として、僕が選ばれることになるとは思っていなかったので・・・本当にびっくりしました(笑)。光栄です。
 景虎は自分が“毘沙門天の化身”だと信じ、仏法をよく学び、真の勇気を育て、守るべき正義がはっきりしていて、徹頭徹尾、私利私欲のために戦わない。大いなる功徳と幸せをもたらすために戦う。そこがストイックですてきだと思いました。そんなストイックな景虎を、宇佐美定満という人物は“一歩下がって見守り支える”という厚い信頼関係を、嫌みではなく温かい感じに出せればいいと思っています。強さのなかにある優しさ・・・武将にはあるまじき柔らかさが目に宿ればいいなと。そして、力が拮抗(きっこう)していた戦国時代に、知的な老将というのかな、インテリジェンスを感じてもらえるように心がけたいです。想いばかりでなかなか、そんなふうに表現できるかどうか・・・自信はないのですが(笑)。
  ガクトさんはどんどん武将らしく、表現も豊かになっていく。とても感性が鋭いのでしょうね。ミュージシャンも役者も同じ“表現者”。言葉に魂を込めて感情をぶつけあい、信頼関係を築いていく。ガクトさんと僕が共鳴することで、景虎と宇佐美も共鳴していくことに繋がるといいな、と。

勘助と景虎の対比

 ここ数年の大河ドラマは少し女性的というか、きれいな印象だったのですが、今回は主人公の山本勘助が汚くて驚きました(笑)。
 彼を見ていたら、黒澤明監督の映画「用心棒」の三船敏郎さんの登場シーンを思い出して。砂風で土ぼこりが舞う中を歩いてくる三船さんのイメージと内野さんが重なって見えた。その堂々として近来まれに見る男っぽさに感心しました。
 越後の長尾家に潜入して来た時の勘助は、特に髪の毛ぼうぼうでひどい格好。一方、僕の御屋形様はきれいで物静かな人。そんな勘助と景虎の取り合わせが面白くて。僕が2人に挟まれて酒を酌み交わすシーンは、まるで異次元の世界にいるような感じでした。
 川中島では、武田と上杉は明らかに戦う目的の違いが出てくると思うんです。景虎の守護神・毘沙門天の姿は冷静沈着を示し、悪を挫(くじ)く勇気、清く正しく強く生きることをさとしているという。戦いに美学があるのかわからないけれど、毘沙門天の力を借りた景虎と宇佐美、2人の戦いの美学のようなものを表現できたらいいと思っています。
 ミステリアスなガクトと、老優緒形が、歴史をどうなぞるのか、『その時、歴史はどう動くか』といったところでしょうか(笑)。

 
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