今回の勘助は、武田家の軍師・参謀という存在にしては、あちこち歩き過ぎですね(笑)。『ちょっと行ってくるから』と、越後まで鉄砲を売りに行き、あげくの果てにミイラ取りがミイラになっちゃった。奇しくも諸角虎定が『あの者、いまだ放浪の癖が・・・』と言っているように、まさにこれが勘助の原点なんですね。 僕も、道安を演じていて『やっぱり、こういうフットワークの良さが今回の勘助の魅力かな』って感じましたね。勘助の基本ラインに“放浪好きで、いろんなところに首を突っ込む”みたいなキャラクター設定があり、それが久々、道安で発揮できた気がします。 道安は紀州根来衆という設定ですね。和歌山にある根来寺にはいくつもの銃痕が残っているそうで、鉄砲という新しい武器を開発して取り入れたさきがけです。そこから来た僧兵崩れのような人間であり、歩いたり、馬に乗ったりして、はるばる越後までやってきた。そこで、ぼろぼろの法衣に数珠をかけ、髪はぼさぼさ、眼帯も粗末なものにといった具合に全体を非常に汚く破戒僧のようにしてみたり(笑)。その汚さがリアリティーにつながるわけですから。 結果的にこれが功を奏しました。それというのもガクト(Gackt)さん演じる長尾景虎を改めて見たら、これが実に美しい(笑)。ああ、対照的でかえってよかったなって。汚いのが正解だったかなと・・・。 景虎とのやりとりは、最初から道安の素性を見越したうえでの“演じ合い”になっていて、その面白さがありましたね。ガクトさんから『道安・・・』って言われるたびに、『本当はその言葉の裏で“山本勘助”って言っているんだろ、このやろー』みたいな(笑)。実は見越しているのに、そっちがそう言うなら俺は最後まで道安で通してやるぜって。そんな掛け合いが楽しめました。