助産師外来 普及は“難産” 出産難民の救世主…悩みはやはり人手不足
11月29日8時1分配信 産経新聞
産科医が不足し、「出産難民」が問題化するなか、「助産師外来」を導入する医療機関が増えている。医師の診療の一部を助産師がケアする外来だ。神奈川県横須賀市立市民病院もそのひとつで今年10月、「助産師外来」を開設。妊婦に好評を博している。ただ、助産師自体の不足もあり、全国的な広がりにはまだ課題が多い。(横浜総局 豊島康宏)
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開設したばかりの横須賀市立市民病院の助産師外来を訪ねた。
妊婦はBGMを流し、リラックスできるよう作られた専用の個室で、助産師の保健や母乳指導のほか、健診を受ける。この日は、妊婦が腹部エコー検査を受けていた。助産師が「女の子ですね」と伝えながら、モニターに映る胎児の様子を見せると、妊婦も穏やかにながめていた。
同病院の助産師外来は月8、9回で、完全予約制。保健指導や健診は妊娠中2回程度、原則として正常な経過で希望する妊婦が受けられる。
妊婦健診は1回30分、5000円で、医師による妊婦健診と同じ金額だ。異常が発見された場合は、医師が診療する。最終的には、助産師が正常経過の女性の分娩(ぶんべん)まで行う「院内助産」を目標にしている。
≪「信頼」築きやすく≫
助産師外来を設置する医療機関は年々増加している。背景にあるのは産科医不足。分娩を休止する医療機関が相次ぎ、地元で出産できない「出産難民」と呼ばれる妊婦が出るなど、各地で深刻な状況が浮き彫りになっている。
助産師外来は厳しい現状の救世主とみられており、昭和51年に誕生した助産師外来は現在、推定で208にのぼっている。
静岡赤十字病院(静岡市)では今年3月に開設。すでに700人以上の妊婦をみてきた。曜日ごとの担当を固定しているため、同じ助産師に担当してもらえ、信頼関係が築きやすい。
千葉市の川鉄千葉病院でも昨年4月に開設。妊娠中少なくとも1回受診が可能だ。北里研究所メディカルセンター病院(埼玉県北本市)も医師と連携して、希望者の受診に取り組んでいる。東京都保健医療公社荏原病院は6月の助産師外来設置に続き、9月には院内助産所を開設した。
助産師外来はおおむね好評で、静岡赤十字病院では「検査の内容を助産師が分かりやすく教えてくれる」との声が相次ぐ。
横須賀市立市民病院のアンケートでも「じっくり話を聞くことができた」「質問したいことの答えがほとんど得られたので良かった」と評価が高かったという。
≪全国に2万5775人≫
好評な助産師外来だが、急増しているかというとそうでもない。全国に208あるとされるが、産科や産婦人科をもつ医療機関約6000のうちではごくわずかだ。
理由のひとつは助産師の絶対数の不足。全国で就業している助産師は2万5775人(平成18年現在)。緩やかな増加傾向にあるものの、人手不足の状態が続く。
さらに、厳しい経営状態の病院が多いなか、新たな外来の設置に二の足を踏む医療機関があるとみられる。
このため、厚生労働省は助産師外来設置に向け、予算獲得に必死だ。同省では「助産師外来の普及が進めば」と話している。
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