義弟というから若いのかと思ったら、香川県の殺人犯は六十一歳だった。佐賀の入院患者殺害容疑者も六十一歳。こちらは暴力団員だが、多少の分別はあってもいい年齢だ 還暦を過ぎて凶行に走る男たちを見ると、その年になるまでどう生きて来たのか考えさせられるのである。犯罪の低年齢化が進む半面、高齢化社会はこうした困った中高年を生み出しているのではないだろうか 還暦を迎えた人がよく口にするのが船頭さんの歌である。「ことし六十のおじいさん」。ほんの三、四十年前までの六十歳像は好々爺である。最近の事件は日本人の年齢観が大きく崩れてしまった現実を見せつける 守屋前防衛次官が逮捕された。六十三歳。妻も逮捕とは事件の異常さを物語っている。他人事ながら情けない人生の終末だと思う。六十歳を過ぎても次官に居すわった罰の大きさに気づいたかどうか。話題の新書「日本人の死に時・そんなに長生きしたいですか」(久坂部羊著・幻冬舎)の一節を思い出す 「長寿欲を捨て、六十歳までに人生のやりたいことをやっておこう」。皆そう思って年をとる。が、それができないから困るのである。
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