二〇〇〇年のイスラエルとパレスチナの大規模衝突で頓挫したパレスチナ和平プロセス再生の出発点となる中東和平会議が、米国で開かれている。
ブッシュ米大統領が呼びかけた。中東和平でアラブ諸国や日本など約四十カ国が参加して本格的に協議するのは七年ぶりだ。
会議は、米ホワイトハウスでのブッシュ大統領とイスラエルのオルメルト首相との首脳会談を皮切りに始まった。二日目はブッシュ大統領とオルメルト首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長がワシントン近郊のアナポリスで三首脳会談を行い、続いて国連や主要国が参加して中東和平国際会議を開催。イスラエルと国交のないサウジアラビア、シリアも参加し、アラブが一致して和平交渉を支援していく体裁を整えた意義は大きい。この会議がパレスチナ和平交渉の進展、アラブ諸国とイスラエルとの関係改善の端緒となるよう期待したい。
中東和平プロセスは、一九九三年のオスロ合意(暫定自治宣言)に基づきパレスチナ自治政府樹立、恒久的地位交渉へと進んだが、二〇〇〇年秋以降の大規模衝突で決裂した。〇三年に米国、国連などが提示した和平案(ロードマップ)は、パレスチナ武装組織解体、イスラエルの入植活動停止という第一段階が履行されず、行き詰まっている。
しかし、激しく対立したアラファト前パレスチナ自治政府議長、シャロン前イスラエル首相も去った。衝突も沈静化して和平交渉再生への環境は整ってきたかにみえる。
会議開催の背景には、和平への展望を示すことで、ガザ地区を武力制圧したイスラム原理主義組織ハマスや、それを支援するイランの勢力拡大をけん制したい米、イスラエル、アラブ・パレスチナ穏健派の共通の利益があるとみるべきだろう。特にイランは最近、同じイスラム教シーア派住民が多数を占めるイラクに影響力を拡大、核開発にも突き進んでおり、脅威となりつつある。
中東和平には、イスラエルに圧力をかけられる米国の関与が不可欠だ。イラク情勢が泥沼化し、ブッシュ政権は目立った外交実績が残せていない。中東和平の仲介に乗り出した裏には、〇九年一月に迫った任期切れをにらみ、形になる外交遺産を残したいとの思惑が見え隠れする。
和平交渉では、将来のパレスチナ国家の国境、聖地エルサレムの帰属、イスラエル領へのパレスチナ難民帰還権など課題が山積している。核心問題の合意は容易であるまいが、本格交渉再開で和平への道筋を示すべきだ。
闇サイトなどをきっかけとした犯罪が多発する中、インターネット上の違法・有害情報対策を探るため、総務省が設けた有識者による検討会が初会合を開いた。来年三月の中間報告に向け議論を進める。
初会合で増田寛也総務相が青少年への有害サイトの影響に懸念を表明したのを受け、検討会は未成年者に有害サイトの閲覧を制限するフィルタリングサービスの強化などから話し合っていくという。
携帯電話会社などでつくる電気通信事業者協会の調査では、フィルタリングサービスの利用者は九月末で約二百十万人に上り、一年前の三倍以上に増えた。政府の要請を受け、携帯三社が昨年十二月から携帯購入時に保護者に利用を促す制度を始めたことが作用しているようだ。
しかし、利用者はまだ携帯を使っている小中高校生の三分の一以下にとどまる。内閣府が十月下旬に発表した成人一般対象の世論調査でも半数がサービスの存在を知らなかった。一層の普及を促す方策を講じる必要があろう。
検討会は、サイト管理者に有害情報の削除を促す策も議論する。素直に応じる人ばかりとは限らない。有害サイトの開設自体を抑えることを含め、新たな法規制を考えなければならないかもしれない。有害サイトの規制法令は、現状では二〇〇三年施行の出会い系サイト規制法だけで、他は野放し状態である。
携帯の闇サイトで知り合った男三人による女性の拉致殺害や、自殺サイトを舞台にした嘱託殺人などが続発する状況を考えても、法的に次の段階に進む時期にきている。先の内閣府の調査によれば、九割以上の人が規制に賛成しており、理解は広がっているとみていいだろう。
(2007年11月28日掲載)