「電話料金が安くなる」など虚偽の説明で必要のないオフィス向け電話機器のリース契約を結ばされたとして、名古屋市内の元印刷業の男性(63)がリース会社「NECリース」を相手取り、特定商取引法のクーリングオフの成立と支払い済み代金計約55万円の返還を求めた訴訟の判決が名古屋高裁であった。満田明彦裁判長は「男性は1人で印刷していた零細業者」として男性のリース解約にクーリングオフの適用を認定。男性側敗訴の1審・名古屋地裁判決を取り消し、同社に支払い済み代金の返還を命じた。
同法は「営業のために締結する契約」についてクーリングオフの対象外としている。1審・名古屋地裁判決は「男性は自宅とは別に事務所を構えて屋号もある事業者」として適用対象と認めず、男性の請求を棄却した。しかし、満田裁判長は男性について「1人で手作業で行う零細業者」と一般の消費者と同程度に保護されるべきだと判断。そのうえで「複数の従業員がいることを想定したオフィス向けの電話機器を男性が営業のために締結したとは認められない」と述べ、クーリングオフの適用除外規定に当たらないとした。
男性は同社のほかオリックス、日本ビジネスリース、クレディセゾンの3リース会社と電話機器やコピー機など13件計約1826万円のリース契約を締結。しかし、所得は月額約10万円にとどまり、04年に廃業、支払い不能になったため提訴した。残る3社とは係争中。
国民生活センターに寄せられた同様の相談件数は05年度に8665件。男性の弁護士は「高裁レベルで小規模自営業者にクーリングオフを認めた判決は聞いたことがなく画期的だ」と話している。【石原聖】
毎日新聞 2007年11月20日 中部朝刊