「生きておれの手元に戻って来てほしかった」--。香川県坂出市で山下茜ちゃん(5)、彩菜ちゃん(3)姉妹と祖母のパート従業員、三浦啓子さん(58)が遺体で見つかった事件で、姉妹の父清さん(43)が28日、坂出市水道局の会議室で記者会見した。事件発生後、娘を捜して夜通し車を走らせ、無事を祈り続けた13日間。だが愛する娘たちの元気な声は戻らず、振り絞るような言葉に悔しさと無念さがにじんだ。
姿を見せた清さんは目に涙を浮かべながら深々と一礼し、立ったまま「皆さん、どうも。この事件で、ばあちゃんと子どもたち……やっぱりだめでしたが、おれらの手元に帰ってきました。どうもありがとうございました」と沈んだ声で途切れ途切れに話し、ゆっくりと席に着いた。
黒色のダウンジャケットとジャージー姿。1人で会見に臨んだ清さんはこの日午後、3人の遺体と対面した際、「やっと帰って来たんやのう」と声をかけたといい、「警察から聞いても、信じれんかった」と唇をかみしめた。「ばあちゃんも子どもも、顔がはっきり分かりました。ほんま、生きててほしかった」と目を上げることができず、疲労の色を隠せなかった。
清さんの目は会見場に入る前から真っ赤。それでも、時折手で口を押さえておえつをこらえるなど、気丈な振る舞いを見せていた。つらそうな姿を見かねた友人が会見途中、「清、もうええわ」と退席を促し、約10分で会見は終わった。
◇「原因はお金以外にない」川崎容疑者の兄
坂出市内に住む川崎政則容疑者の兄(75)は28日、自宅を訪れた報道陣に対し「カッとなったんかもしれんけど、殺さんでもいいのに。詳しくは分からないが、原因はお金以外に考えられない」と疲れた表情で語った。
今年4月にがんで死亡した川崎容疑者の妻は、遺体で見つかった三浦啓子さん(58)の妹。兄によると、川崎容疑者の妻は約1年前、どこかで借りた約200万円を三浦さんに渡したという。妻には他の借金もあり、総額は数百万円に上った可能性がある。
川崎容疑者は妻名義の借金について「大変だ」とこぼし、毎月、返済に追われていた。妻の葬儀費用も分割払いとするなど、最近は「金に困っていた様子だった」という。
毎日新聞 2007年11月28日 23時30分 (最終更新時間 11月29日 0時48分)