現在位置:asahi.com>スポーツ>コラム>J’sコラム> 記事 岡田武史さん、本音で語る2007年09月25日 1カ月ほど前のことになるが、朝日カルチャーセンターなどの主催で、元日本代表監督の岡田武史さんと、ラグビー・神戸製鋼監督の平尾誠二さんの対談があった。旧知の平尾さんと、地元大阪での対談ということもあり、監督時代には見せない岡田さんの顔も随所に見られた。内容的には、過去の岡田さんの発言などと重なるところもあるが、今後の議論のきっかけになるような話も多かったので、少しここで紹介させてもらいたい。
まずは、日本代表の監督。サッカーはオシム、ラグビーはカーワンと、どちらも外国人監督が代表を率いているが、岡田さんは現状では肯定派だ。 「日本人にはやはり外人コンプレックスがある。同じことを言っても、日本人なら議論になるが、外人に言われたら、まあいいかってなる」 そこで岡田さん自身が例に出したのは、フランスW杯大会でのこと。まだ対戦相手が決まる前に、軽い気持ちで1勝1敗1分けくらいかなと言ったら、戦う前から負けるつもりかとめちゃくちゃにたたかれたという。 「でもこれを例えばジーコが言っていれば、うーんそうか、となる」とやや恨み節。しかし、「日本というのは空気で左右される。それに逆らっていくのはめちゃくちゃ勇気がいる」と、一方向に流れて、理性的な判断を失いがちな中では、現実的な外国人監督の目は必要だという考えだ。 だが、岡田さんはこうも言う。「最終的に、日本人が世界のトップと互角に戦うレベルになったら、外国人では勝てないという気がしている。日本人の本当の良さは、日本人しか引き出せないように思う」。現日本代表のオシム監督は「日本を日本化する」と就任会見で述べた。恐らく2人の目指す方向性は似ている。岡田さんが、外国人には難しいと指摘する日本の良さを、オシム監督がどう引き出すのか。相当な関心を示しているはずだ。 それでは世界と互角に渡り合うために、日本人はどうすればいいのか。 「武道の精神というのかな。外国人の選手と、お互いに筋肉を鍛え合うような勝負をしても、絶対勝てない。生きるか死ぬかの一本勝負というか、武道でいう究極の状況で、60兆細胞の力全部を使うような、そういうものを出していかないと、いつまでたっても彼らは超えられない」と、かなり精神面に踏み込んだ結論である。 さらに続けて、「W杯でクロアチアとも試合をしたけど、彼らは内戦で肉親をなくしたりしてる。そいつのがんばりと、この豊かでのほほんとしている、24時間コンビニが開いていて、うざったいとか言ってても暮らしている、この日本の若者のがんばりが一緒になるわけがない。そういうことを考えると、何かを超えていかないといけない」と、持論を展開した。 「でもこういう話すると怪しいおじさんと言われちゃうんだよね」と、最後は笑わせたが、世界との「次元の違い」を痛感した経験を突き詰めてきた岡田さんならではの言葉とも言える。 日本の選手育成にも異論を挟んだ。 「今、日本人の子供は、ボールコントロールはめちゃくちゃうまい。世界でもトップレベル。でも、それをいつどうやって使うのかが分かっていない。日本人は学び好きで、教え好きな分、自分で判断さすようなことが苦手。自分も横浜マリノスで失敗している」 そこで明かしたのは、03年、04年とマリノスを優勝させ、臨んだ05年、06年シーズンのこと。岡田さんの戦術への信頼が、かえって選手の判断力を奪ってしまったという反省から、選手自身が判断する戦術に移行を試みたが、結果は出せず、結局、06年のシーズン途中で、岡田さんは監督を辞任することになった。 実は、僕はこの勝てなかった2年間、マリノスの試合を取材することが多かった。当時、岡田さんが盛んに、「今季はおれは何も言わない」という意味のことを繰り返していたが、選手の方は「どうしていいか分からない」と戸惑っていた。ジーコ前日本代表監督も、自由ということがキーワードだったが、結果的にはその自由をうまく使いこなせなかった。サッカー界に限らず、日本社会全体が抱える課題とも言えそうだ。 その上で、岡田さんは、Jクラブの選手育成の危うい一面を指摘する。 「マリノスユースはみんな同じようなタイプが多い。みんな超エリートで、遠くから電車に乗って集まって、練習して、また電車に乗って帰るのは11時過ぎ。友達とは遊べないし、家族と一緒に食事もできない。これは絶対に良くない。人間として成長する一番大事な時期なのに。せめて、休みを週2日にしろと言ったが、だめだった。人とコミュニケーションを取るとか、サッカー以外にも学ぶべきことはある」 いかがだっただろうか。もちろんこれは平尾さんとの掛け合いの中で発言されているのだが、そちらは字数の都合もあり、割愛した。対談のすべてではないが、概要が朝日カルチャーセンターのHP(http://www.asahi−culture.co.jp/www/okadahirao.html)にアップされているので、そちらもお楽しみください。 それにしても、現場を離れると饒舌な岡田さん。監督時代にこれくらい話してくれれば、さぞや取材も楽だったはずだが……。(藤田淳) この記事の関連情報PR情報 |
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