防衛装備品の発注で便宜を図る見返りに、防衛専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者(69)らから賄賂(わいろ)を受けていた疑いが強まり、東京地検特捜部は28日、収賄容疑で前防衛事務次官の守屋武昌容疑者(63)を逮捕した。特捜部は、守屋容疑者が長期にわたって宮崎容疑者から受けたゴルフ接待を賄賂と認定した。関係者によると、守屋容疑者は大筋で容疑を認めているという。
特捜部は、妻(56)についても収賄容疑の「身分なき共犯」にあたるとの見方を強めており、取り調べている。
同社をめぐる不正支出事件とゴルフ接待問題は、防衛省の大物次官による汚職事件に発展した。
収賄罪は公務員に適用される「身分犯」だが、特捜部は、妻がゴルフ接待に同伴するだけでなく、単独でも積極的に接待を受けていたことを重視。収賄容疑の「身分なき共犯」として取り調べに踏み切った。収賄罪で公務員の配偶者が立件されれば異例だ。
特捜部は午後、新宿区内の守屋容疑者宅の家宅捜索を始めた。
調べによると、守屋容疑者らは平成14年末以降、宮崎容疑者らが防衛装備品全般の発注で便宜を受けたい趣旨のゴルフ接待を恒常的に受け、プレー代金などを賄賂として受け取った疑いが持たれている。
守屋容疑者らは、過去8年間で約300回、計1500万円分のゴルフ接待を受けるなどしていたことが明らかになっている。特捜部は、このうち収賄罪の公訴時効(5年)にかからない平成14年末以降の分(約500万円相当)を立件の対象とした。
山田洋行不正支出事件で有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕された同社元執行役員、今治友成容疑者(57)は特捜部の調べに、今年4月の守屋氏接待は「賄賂の趣旨があった」と供述。このため特捜部では、守屋容疑者らが受けていたゴルフ接待は賄賂であると判断、逮捕に踏み切った。
守屋前次官は在任中の平成15年8月、航空自衛隊次期輸送機(CX)エンジン調達で、自らが議長を務める装備審査会議で、同社が代理店となっている米ゼネラル・エレクトリック(GE)製の採用を決定。
宮崎容疑者が昨年6月に退社して防衛商社「日本ミライズ」を設立した後も、GE担当者と3人で面会したほか、部下に対して「(ミライズを代理店とした)随意契約ではだめなのか」とただすなど、宮崎容疑者に有利な発言を繰り返した。特捜部は、守屋容疑者が接待の見返りに具体的にどんな便宜を図ったなどを追及する方針。
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