勤務医不足の打開策を考えるため、東京都は11月27日夜、「医師確保対策講演会〜医師確保の問題点と今後の展望〜」を都庁第一本庁舎で開催した。参加した多数の病院の人事担当者らは、基調講演やパネルディスカッションを通して、「病院内や地域で協力して女性医師を含めた全職員に働きやすい勤務環境をつくることが、医師確保の最善策であること」を確認し合った。 講演会では、女性医師の就労環境整備で先駆的な取り組みを行う大阪厚生年金病院の清野佳紀院長が「医師の勤務環境改善の取り組み」を題に基調講演。
清野院長は、「近年女性医師の割合が増加し、女性の就労環境整備が重要になっているにもかかわらず、日本の病院において出産や育児に対する支援体制が遅れている」と指摘。同病院の取り組みとして、学校在学までの育児の際には週30時間程度の勤務でも正職員として扱うことや、残業や当直を求めないなど個人の状況にあわせた勤務体制を整えていることを紹介した。
これについて清野院長は「そのため医師を多く雇用する必要があり、人件費は高くなる」としながらも、「その分、産科で分娩の機会が多くなるなど、病院では結果的に収入も増す」と説明。医師を増員し、チーム医療として互いに支え合うことで、「女性医師にとっても男性医師にとっても働きやすい環境がつくれる」と話した。
また、東京女子医科大学の川上順子教授も「女性医師再教育・復職プロジェクトの取り組み」と題して講演。
川上教授はまず、清野院長と同様に女性医師の割合が増加することに触れ、今後働きざかりの年代では40%を占める可能性に言及した。その上で、女性医師の確保のために、病児保育や学童保育の整備、また時配偶者や周囲の理解の必要性を訴えた。
さらに川上教授は、女性医師が勤務を続けていくために重要なこととして「臨床現場との絆を切ってはいけない」と指摘。そのために、同大学で実施している「女性医師再教育センター」があることを紹介した。同センターは、やむを得ず現場を離れた女性医師を募り、就職と切り離した形で臨床の勘を取り戻してもらうもの。現在、日本赤十字社や済生会などと協同して、全国で研修から就職からを支援する「女性医師再教育―復職プロジェクト」として展開している。
このほか、「医師確保の問題点と今後の展望」をテーマにパネルディスカッションも開催。勤務医の負担軽減として地域の開業医が夜間診療に従事するなどの体制構築や、医師確保が困難とされる中小病院同士の連携について議論した。
座長を務めた東京都福祉保健局の梶山純一技監は、「民間病院が共倒れにならないよう、機能分化など何らかの形で新しい動きをしていく必要がある。知恵を出し合っていきたい」と述べた。
更新:2007/11/28 キャリアブレイン
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