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船積書類を電子化し輸出業務を効率化するキヤノンの「船積書類管理システム」
〜輸出業務に伴う「スピード」「品質」「コスト」の課題を解消〜
オフィスにあふれる紙文書やテキスト,イメージデータなど,多様な情報をどう一元的に管理するのか――。多くの企業が抱えるこうした課題に応えるのがキヤノンの「imageWARE Business Solution(以下,iWBS)」だ。iWBSは,業務の効率化や業務プロセスの可視化をサポートするコンテンツマネジメントシステム。業務で必要とされる様々な機能をコンポーネント化(※)しており,それらを組み合わせることで,ビジネスシーンの変化に合わせた業務システムを,柔軟かつスピーディーにカスタマイズすることが可能だ。ここでは,特に輸出貿易を効率化する「船積書類管理システム」について紹介する。
※「imageWARE Business Solution」のコンポーネントは,キヤノン株式会社が開発
複雑で膨大な紙文書が行き交う貿易業務

近年,製造業を中心にグローバル化が進展している。それに伴い,多くの企業では生産拠点や販売拠点,調達先を含んだグローバルなサプライチェーンを構成。その結果,輸出業務が急激に増加している。

輸出業務は,深い専門的な知識とノウハウが求められる。通常,メーカーや商社などの荷主は,海運貨物の受け渡しを行うフォワーダー(乙仲業者)へ依頼し,通関の申請や船の手配を行う。そこでは,「インボイス」(送り状)や「パッキングリスト」(貨物の梱包明細書),「シッピングインストラクション」(船積依頼書)など多様な船積書類(紙文書)が行き交い,また,それと並行して船荷証券の受け渡しがあるなど,複雑な仕組みとなっている。

こうした輸出業務が増えることにより,企業は大きな課題を抱えるようになった。それは「複雑かつ膨大な情報をいかに管理するか」という問題である。輸出業務では,先に述べたように様々な書類を作成する必要が出てくる。しかも,こうした文書は,電子データだけでなく,紙文書として保管する作業も発生する。一口に紙文書といっても,自社で作成するものだけとは限らない。船荷証券のように船荷会社からエビデンスとしてもらう文書もある。

このように多種多様な電子データや紙文書が混在する環境の中で,それらをどう一連の案件として管理していくか。これは輸出業務を行うすべての企業にとって共通の課題といってもいいだろう。実際,以下のようなことで悩んでいる企業は少なくないはずだ。

― 通関の書類について問い合わせがあった時に,ファイリングした紙文書から該当する文書を探し出し,内容確認にかかる時間や負荷を短縮したい
― 監査に向けた網羅性が求められていく中で,社内でデータを持っている文書と,外部からきた文書とを紐づけて管理したい
― 紙の保管コストや作業コスト,あるいは現物を送付するコストなど,輸出業務に伴って発生するコストを削減したい

こうした数々の課題を解消するのが,キヤノンマーケティングジャパンが提案するiWBSの「船積書類管理システム」だ。これはキヤノンのロジスティクス部門が実際に経験してきたノウハウをソリューションとして具現化したもの(コラム参照)。その最大の特長は,各種文書が行き交う輸出案件を,案件番号である「インボイスナンバー」で紐づけし,一元管理できる点にある。また,その一元管理された情報は,グループ会社などで構成するイントラネットへ公開することが可能で,海外からもWeb経由で文書の内容やステータスを迅速に確認することが可能だ。

業務の効率化を目指した「船積書類管理システム」

船積書類管理システムの仕組みはおおよそ,図に示した通りだ。

まず,同システムでは,自社で作成するインボイスやパッキングリスト,シッピングインストラクションのデータを船積書類管理システムへ直接データを送ることで,自動的にPDF化した上で帳票データとしてデータベースに取り込む。

一方,船荷証券のような,紙で受け取る書類については,船積書類管理システムでまず台紙の出力を行う。台紙には,案件ごとに異なるインボイス番号や書類の種別などの情報を持つ「QRコード」が印刷されていて,その台紙に関連する船荷証券などをアタッチした上でスキャンする。スキャン作業も,コピーと同じように複合機の上に書類を重ね,スタートボタンを押すだけであり,煩雑な作業は不要だ。

このスキャンしたデータから,OCRサーバーがQRコードを読みとると,書類を案件ごとに自動で仕分けし,データベースへ取り込まれる。QRコードがあるため,順番等を意識することなく一度に複数の案件の書類をまとめてスキャンしても,仕分け作業を自ら行う必要はない。もちろん,スキャンしたデータもPDF化される。

操作性にも優れている。出航日を入力したり,期間を限定して検索すると,それに合致する書類が一覧で表示される。そこで,業務に関連する書類を確認することができるほか,必要な書類にチェックをいれ,印刷ボタンをクリックすると,それらの文書を1つのファイルにまとめたPDFが生成される機能もある。

船積書類管理システムの概要 図1:SOAによる課題の解決
自社でデータとして持っている文書はそのままPDF化しデータベースへ登録。紙で受け取る帳票類は複合機などで一括してスキャン。OCRサーバーが情報を認識し,データベース登録を行う。
オフィスから書類の束が消え,情報共有が容易に

船積書類を電子化し,インボイス番号で管理することで実に様々なメリットが生まれる。まず,関連する一連の書類が横並びで見られるため,問い合わせ対応やそれに伴う作業が簡略化される。特にスピード面での効果は大きく,空輸やFAXに頼っていた海外とのやりとりが,ネットワーク上で完結できるため,作業負荷が大きく軽減されるはずだ。

例えば,インボイスのバージョン違いに気づかずに,海外とやりとりしていて話が行き違うことがある。その点,船積書類管理システムでは,ネットワーク上に常に最新のバージョンが表示され,業務部門と相手先と双方でそのデータを見ることができるため,このような“勘違い”による業務効率の低下を防げる。また,わざわざ業務部門に問い合わせるまでもなく,海外でもどこでも必要があれば直接データベースを検索して,自ら情報を引き出すことも可能だ。

業務効率だけでなく,質の向上を期待できる点も大きい。このシステムを活用し業務を標準化することで,保管レベルが均一になる。つまり,作業メンバーがたまたま休んだり,配置換えがあったとしても,船積書類管理に伴うすべて業務を,同じレベルで引き継ぐことができるのだ。属人性から脱却し,キャビネットや書庫から必要な文書を探す手間を省ける点は,非常に重要なポイントだといえるだろう。

さらに大きなコスト効果も期待できる。これまでに触れたような煩雑な業務に関わる作業コストはもちろん,クーリエ費用,あるいはペーパレス化によって外部倉庫の費用,オフィス保管スペース,出力費用などを大幅に圧縮することができるからだ。

2008年後半には,税関システム「NACCS」のバージョンアップが予定されている。通関のあり方が大きく変化していく中,船積書類の電子化,作業の効率化を図る環境を準備していく上で,船積書類管理システムは有効なソリューションだといえるだろう。

キヤノンのノウハウを生かした「船積書類管理システム」

本文でも触れたように,船積書類管理システムはキヤノンの実際の経験を元に開発されたソリューションだ。

売上の8割を海外が占めるキヤノンでは,デジタル商品の売上の上昇に伴い,製品輸出も増加した。日々発生する通関の書類など紙文書の処理や保管,共有について頭を悩ませていた。従来,ロジスティクス部門では,1日あたり約1万2000枚発生するこれらの書類を数人で仕分け,同時に書類の海外発送もこなしていた。

海外の拠点では,日本から送られてくる書類を元に輸入手続きをとる。そのため,ロジスティクス部門には「書類が届かない」「遅い」といった問い合わせやクレームが寄せられることもあった。あまりに量が多く,FAXでは送れないため,仕事のスピードと精度を高めながら,なんとか業務をこなしていたのだ。

そこで,業務改善を行っていく中で電子化できる書類を選別し電子化。データベース上で紙文書と電子化した文書の双方をきちんと紐づけする仕組みを構築していった。

作業の効率化を目指してスタートしたこのプロジェクトは,効率化のほかにも意外なメリットもあった。まず,ネットワークによる情報共有を確立したことで,海外のグループ会社からもほぼリアルタイムで書類や状態が確認できるようになった点だ。それに伴い,書類を空輸する作業が不要になった。また電子化により,文書を保管しておくための外部倉庫の費用も削減できた。2005年のシステム稼働後,書類の仕分けや発送・保管のために発生していた費用も大幅に削減することができたという。

こうした業務改善過程で蓄積したノウハウをiWBSのソリューションとして具現化したのが船積書類管理システムだ。まさに,キヤノンが持つノウハウとベストプラクティスを生かしたソリューションだといえるだろう。輸出貿易に関わるメーカー,商社,フォワーダー,船会社など,さまざまな業種・業態のビジネスシーンに貢献するはずだ。



お問い合わせ:
提供:キヤノン株式会社・キヤノンマーケティングジャパン株式会社

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