文部科学省は5日、所管する独立行政法人・日本スポーツ振興センター(東京)の災害共済給付制度を見直し、学校でのいじめなどが原因で児童・生徒らが校外で自殺した場合も給付金(死亡見舞金)を支給することを決めた。昨年10月にいじめを苦に自宅倉庫で自殺した福岡県筑前町の中学生森啓祐君=当時(13)=の事例は、場所が「学校管理下」という支給要件を満たさないとされていた。改正した関係省令を9日付で施行、過去2年間に起きた事案にも適用し、森君の場合も支給対象となる見通し。

 同制度は、自治体や学校法人、保護者が掛け金を払い、国も補助金を出す互助共済制度。学校管理下の事故や事件で死亡した場合は原則2800万円、負傷して後遺症がある場合は上限3770万円の障害見舞金が支給される。

 いじめ自殺については従来、自殺の理由と場所が「学校管理下」であることを支給要件に定め、自殺場所が自宅など校外の場合は対象外と判断してきた。森君の遺族の支給申請を機に要件の在り方が議論となり、文科省が見直しに着手。いじめ自殺を学校管理下で発生した「事件」に起因する死亡と位置付け、場所を問わず支給対象を広げることに決めた。ただ、塾や地域のスポーツ団体など学校外の活動の中で起きたいじめ自殺は、これまでと同様に支給対象とはならない。

 文科省学校健康教育課は「いじめ自殺を事件として広い概念でとらえ、学校管理下のいじめが原因であれば対象に加えることにした」と説明している。


■災害共済給付制度 

 学校や通学路など「学校の管理下」で児童生徒がけがをしたり、死亡したりした場合に医療費や死亡見舞金が支払われる共済制度。学校設置者(県、市などの教育委員会や国、学校法人)、保護者が1人当たり年額270‐1880円の掛け金を分担する。学校設置者の申請をもとに、文部科学省所管の独立行政法人・日本スポーツ振興センター(東京)が給付金を支払う。死亡見舞金は最高2800万円、通学路で亡くなった場合などは半額が給付される。2005年度は全国の児童生徒のうち、96.9%の約1796万人が加入。死亡見舞金の支給は82件だった。


=2007/07/06付 西日本新聞朝刊=