後発薬に「効能追加」の壁処方箋変更でも普及に疑問符
後発薬の売り上げが大きく伸びるとの期待から、11月9日以降、後発薬メーカーの株価は軒並み上昇した。日経平均株価が1万5000円割れとなった全面安の相場でも、最大手である沢井製薬の株価は一時30%高を記録した。 だが、実際には今回の施策で先発薬から後発薬の切り替えがすんなりと進むとは限らない。新薬メーカーによる先発薬の“延命措置”が増えてくるのは確実と見られるからだ。 「クラビット事件」。後発薬メーカーがそう呼ぶ出来事が2006年2月に起きた。第一製薬(現第一三共)の抗菌剤「クラビット」の思わぬ形での特許延長だ。 クラビットの有効成分である「レボフロキサシン」の特許が2006年6月に切れることから、十数社の後発薬メーカーが同じ成分の薬の発売を目指した。ところが、特許切れが間近に迫った2006年2月、レボフロキサシンの特許は延長されることが決まった。 残る薬事行政の矛盾理由はレジオネラ菌などの殺菌という新たな薬効が認められたことだった。特許法上、効能が追加されると特許期間が延長されることになっている。こうした制度は日本だけでなく米国や欧州でも同じだ。 ただ、欧米では効能追加による特許延長は1度しか認められないのに対し、日本では複数回の延長が認められる(上限は5年間)。実際、第一三共はその後も効能追加を繰り返し、レボフロキサシンの特許期間を上限いっぱいの2011年5月まで延長した。同社は効能追加を「あくまでも患者の利益のため。特許期間の延長が目的ではない」と説明する。 欧米では、先発薬の効能が追加されても、それ以前の薬効をうたった後発薬を発売できる。しかし、日本では先発薬の特許が残存している限り、後発薬の申請は薬事法上、認められない。 後発薬メーカーの業界団体である医薬工業協議会は「先発薬の安易な延命に使われかねない薬事法の穴を早くふさいでほしい」と訴えているが、今のところ厚労省が薬事法改正に動く気配はない。 特許切れ近くになって剤形を変更するなど、先発薬メーカーが後発薬の発売を阻止する手段はほかにもある。後発薬を本気で普及させる気なら、薬事行政の矛盾解消が不可欠だ。 日経ビジネス2007年11月26日号14ページより |
|||||||||
|
|||||||||
|