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【私説・論説室から】

このクイズ、解けますか?

2007年11月28日

 「ある日、お父さんと息子が二人で高速道路を走っている時に、事故にあいました。父親は即死、息子の方は救急病院に運ばれました。運ばれた病院で、男の子の手術をしようとした外科医が、子どもを見て驚いた表情で、こう言いました」

 「私には、この子どもの手術をすることができません。というのも、この子どもは私の実の息子だからです」

 ここでクイズです。この外科医と男の子の関係は?

 不倫の末にできた子と思ったあなた、テレビドラマの見過ぎかも。離婚した妻が息子を引き取り、再婚した男性と事故に遭ったと考えた人もいるのでは。今や、三人に一人が離婚する時代、ありそうな話ではあります。

 用意された正解はもっと単純。「外科医は男の子の母親だったから」です。ここで「あっ」と思ったあなた。外科医が男性だと思い込んでいませんでしたか。私はそう思ってしまいました。この例え話は、伊藤公雄京都大大学院教授が自著「『男女共同参画』が問いかけるもの 現代日本社会とジェンダー・ポリティクス」で紹介しています。

 医師の女性割合は厚生労働省の調査で三年前に16・4%。今年の医師国家試験合格者の三人に一人は女性です。女性の外科医もいるでしょう。「固定的な男・女という決めつけでものを見てしまう習慣が、体に染みついている」と伊藤氏は同著で指摘します。

 確かに「女医」「女検事」などドラマのタイトルになりそうな表現は、裏返せばそうした職業に就く人は男性という思いこみがあります。男女共同参画社会の実現に、実は自分の内部に“障壁”があるようです。 (鈴木 穣)

 

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