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2007年11月28日

◎地銀の中間決算 地域経済の課題色濃く反映

 北陸の地銀六行の中間決算は、私たちの暮らし向きがなかなか改善しない現実の裏返し である。資金需要の伸びの鈍さは、地場企業の設備投資が鈍化の兆しを見せている証しであり、全国一安い住宅ローンの低金利競争の激化は、その他個人向けローンの伸び悩みなどと相まって、個人消費の鈍さをうかがわせる。地域経済の課題が地銀の中間決算の数字に、色濃く反映されていると言ってよい。

 不良債権処理が進み、財務体質は格段に強化されたとはいえ、本業のもうけを示すコア 業務純益は、六行中四行で減少した。預金金利が上がっているのに、貸出金利は低く抑え込まれ、利ざやが縮小している。量の拡大が遅々として進まぬために、小さなパイを奪い合う形になっているからだろう。

 ほかにも気になる点が二つある。一つは、地銀の収益の柱に育った投信販売が、大きく 落ち込んでいる点である。金融商品取引法の施行で、セールスに要する説明時間が長くかかるようになったうえに、サブプライム問題の影響で投信自体の売れ行きも細った。投資市況の悪化は、個人の金融資産の目減りを意味し、この先、個人消費がますます冷え込む懸念も消えない。

 もう一つは、改正建築基準法施行の影響である。日銀金沢支店と同富山事務所によると 、七―九月の新設住宅着工戸数は石川県、富山県ともに前年比で三割弱減った。住宅を除く建築着工床面積はもっと深刻で、ほぼ半減である。これは一時的なボトルネック現象と見てよいのだろうが、「端境期」が長引けば、地域経済への影響は無視できなくなる。

 企業の設備投資は、輸出が好調な製造業を中心に順調な伸びを示してはいる。しかし、 地銀がぜひ貸したいと思うような企業は、引く手あまたで、資金調達の方法も多様化している。その一方で、業績が伸び悩んでいる企業には、不良債権化が怖くて積極的な融資に踏み切れない。

 金融機関が手数料収入を増やし、経営を安定させたいと願うのは当然だが、金融機関の 使命は、やはり貸し出しを増やすことである。地域の隅々にまで「血液」が回るようにならないと、地方経済はいつまでたっても活性化しないだろう。

◎学校給食法改正へ 地元の文化を味わいたい

 文部科学省が学校給食の主要目的を従来の「栄養改善」から食の大切さや文化、栄養の バランスなどを学ぶ「食育」に転換するため、学校給食法を大改正する方針を固めたことは時宜にかなったものである。

 食をめぐる乱れの是正ということから、二〇〇五年に「食育基本法」が制定された。さ らに昨年十二月に成立した改正教育基本法には、教育のあり方についての反省から伝統文化を学ぶことが取り入れられた。

 こうした流れに即して学校給食法も改正されることになるのだ。

 地元で昔から使われてきた食材を学校給食でも活用し、生産者との交流や生産現場での 体験を通じて感謝の念や郷土への愛着を育てることなども明記されるそうだ。ふるさとの海の幸、山の幸である食材を生かした食文化を、子どもたちに学校給食でもしっかり味わわせてやりたいものである。

 〇五年に導入された栄養教員の役割についても明記される。国語や算数と同じように食 について授業できるのが栄養教員であり、栄養管理はいうまでもなく、食育に関する学校全体の計画づくり、一般教員に対する指導、地域や学校などとの連携などの役割を担う。

 ただ、現在の食をめぐるゆがみのすべてを学校給食のせいにできない。家庭にも大いに 責任がある。

 子どものころからの栄養の偏りや、取りすぎ、その反対の無理なダイエット、あるいは 地元でとれる食材を無視するなど食をめぐるゆがみが進んできたことからすると、遅きに失した改正ともいえるだろうが、食について正しい知識を教えることはよいことだ。

 学校給食は、明治時代の東北のある県の小学校で弁当を持ってくることのできない子ど もたちの昼食に、おにぎりを出したのが始まりといわれる。それが戦後の食糧難のときに全国的に広がったのである。

 一転して、今は飽食の時代といわれる。世界各地から食品を輸入し、地元産の食材離れ が進み、食の安全問題や産地の表示を偽るなどといったことまで起きている。子どもたちに食に関する知識やマナーを教えることが昔とはまるで違った意味で大事になってきたのだ。


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