今年の初夏、はしかが大学生に流行しました。昔は子どものころに感染することが多かったのですが、今の大学生は予防接種が義務制から任意制になった世代で、ワクチンを接種していなかったり、接種しても免疫力が弱かったりしたため、流行につながったと考えられます。
はしかだけでなく、子どもの感染症である風疹(ふうしん)にも抗体を持たない若い人が増えています。風疹は「三日ばしか」とも呼ばれ、症状ははしかよりずっと軽いのですが、妊娠している人には要注意の病気です。
妊娠初期に胎児が母体から風疹ウイルスに感染すると、白内障、難聴、そして精神や身体の発達の遅れといった、先天性風疹症候群にかかった赤ちゃんが生まれる可能性があるのです。これは妊娠2カ月以内に風疹になった場合の発生率が最も高いのですが、5カ月くらいまでは注意が必要です。
風疹を予防するには予防接種が有効です。子どものころに受けても抗体価が下がっている可能性があるので、その場合も予防接種をしたほうが安心です。将来妊娠する可能性のある若い女性はもちろんですが、予防接種を受けたことがない男性にもなるべく早い時期のワクチン接種をお勧めします。自分自身のためばかりでなく、妊娠中の女性に風疹をうつさないためです。これから生まれてくる新しい命を守るためと言えるでしょう。
予防接種を受けるにはどこに行けば良いのでしょうか。まず近くの小児科医に相談してみてください。保健所や、地域の医師会に問い合わせるのも良いでしょう。(大阪樟蔭女子大教授・三宅婦人科内科医院医師、甲村弘子)
毎日新聞 2007年11月25日 大阪朝刊
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