鈴木貴博:中国の崩壊を願う日本人、終わらない日本の偽装問題
中国経済の発展について、日本人の意識は複雑である。
僕の周囲の意見を聞いていると、経営者と、部長よりも下のサラリーマン――“庶民”と言い換えてもいいかもしれないが――との意識の間には、大きな差があるように感じる。庶民の意識を1つの言葉にまとめると、「中国崩壊願望」という言葉がふさわしい。
いわく、中国で製造された物は不安であるとか、危険であるといったことから話が始まり、企業の情報開示が不十分であると言い、政治が一党独裁であることの問題点を指摘し、結論として「あの国はいずれ崩壊するのではないか」という意見にたどり着く。
実際に中国製の食品から認可されていない添加物が見付かったり、材料の不正表示が行われていることが発覚したりといった事件が報道されると、サラリーマン庶民の意見は勢いを持つ。「やはりそうだったじゃないか」「中国経済の成長もそろそろ世界から見放されるはずだ」というわけだ。
一見もっともそうな意見だが、よくよく聞いてみると彼らは「中国に崩壊してほしい」という言葉を繰り返しているように聞こえてくる。聞かされているのは実は“意見”ではなく、彼らの“願望”ではないかと僕は思う。
では、経営者はどうかというと、彼らの意識は少し違う。というより、明快だ。「中国市場は2010年ごろには倍になる」「数多の問題を乗り越えて、世界の工場としての中国の地位は今よりも強固になる」といった見解が主流に感じる。
この温度差は何だろうか――。
そう自問していて、はたと気付いたのは、中国に乗じて“利益を上げられる者”と、中国に“利益を奪われる者”の温度差だということだ。
中国が発展することで、企業の代表者としての経営者は“利益”をそこに見る。一方、庶民の代表者としてのサラリーマンは、仕事を奪われるという“脅威”をそこに見て、同時に嫉妬を感じている――その思いが「中国崩壊願望」につながっているのではないかというのが、僕が考えたことである。
ここで、1960年代の日本企業を思い出してほしい。当時の状況は、ある意味で今の中国経済と似ていたのではないか。公害、粗悪品、不正材料、汚染……それらが引き起こす事件と訴訟。それらの事件の責任を取り経済界の一線から消えて行った企業もあるが、それでも日本は崩壊しなかったではないか。
むしろ多くの日本企業はそれらの社会批判を受け止め、乗り越え方を考え、学び、実践し、世界水準の経営ができるところまで成長した。1980年代には先進国から見た脅威となり、日米構造協議に代表される国家間の調整に貿易相手国は腐心した。その時代が、今、振り返ればこれまでの日本経済の頂点だったように感じる。
1960年代の日本と2000年代の中国を対比させれば、中国はこのまま多くの課題や苦労を乗り越えて、2030年ぐらいまでは全体として成長を続けていくのではないだろうか。
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