混合診療巡り討論、規制会議と厚労省

 政府の規制改革会議(議長=草刈隆郎・日本郵船株式会社代表取締役会長)は11月27日、厚生労働省の水田邦雄保険局長らを招き、混合診療解禁の是非をめぐり公開討論した。混合診療の禁止の法的根拠は「見出し難い」とする判決を東京地裁が出したのを受け、全面解禁を主張する規制改革会議に対し、厚労省は「患者の負担が不当に拡大するおそれがある」などと慎重な姿勢を崩さず、議論は終始かみ合わなかった。公開討論後の会見で規制改革会議の松井道夫委員は、年末の第2次答申に向けた最優先課題として、混合診療の全面解禁を求める考えを改めて強調した。

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 この日の公開討論には、厚労省側からは水田局長のほか原徳壽医療課長、八神敦雄保険医療企画調査室長ら計5人が参加した。

 規制改革会議はこの日、混合診療が禁止されていることで、最先端医療を享受できるのが一部の富裕層に限られる点を指摘。被保険者の公平の観点から問題があるとの見方を示した。

 福井秀夫委員(政策研究大学院大学教授)は「混合診療が解禁されると金持ち優遇になると言うがよく分からない。単純な理解では、解禁されれば少しの負担で非常に有効かもしれない米国の新薬を使用できる。混合診療を禁止すれば、根っこの保険診療も全額自己負担しなければならなくなり、相当な高額所得者でないと受けられない。その意味で、禁止していることこそ不公平で金持ち優遇だ」と述べた。

 これに対して厚労省は、「場合による。わずかな負担でできるものとそうでないものがある。一定のルールの下に考える必要がある」「(混合診療ではなく)早期保険導入により対応してほしいというのが患者の切実な願いだと思う」などと応じた。
 規制改革会議の草刈議長は「自由診療は認められていて、それを選ぶのは個人の人権。それを選択した時に経済的なブレーキを与えるのは人権侵害だ」と批判した。

 このほか規制改革会議は、混合診療が進めば、新しい治療法や薬を試みやすくなり、患者の治癒可能性の向上や臨床データの集積につながると主張した。厚労省は「データの管理体制が整備されていない医療機関で臨床事例を蓄積しても薬事法の承認審査に活用できるデータにはならない」などと慎重な姿勢を崩さず、議論は最後まで平行線をたどった。

■「混合診療禁止の論理は破たん」
 討論後の会見で松井委員は「混合診療解禁の論理は破たんしていると思っている。この討論をスタートに、混合診療は実質解禁だという形で取り組みたいと改めて心に決めた」と述べ、年末にまとめる第2次答申で全面解禁を求める考えを改めて示した。松井委員はまた「(厚労省は)質問を完全にはぐらかしている。これを延々とやったって解決しない」とも強調し、最終的には政治判断になるとの見方を示した。


更新:2007/11/28   キャリアブレイン

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