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守屋武昌前防衛次官氏が名をあげたジェームズ・アワー氏とは何者か

2007/11/27 15:52

 

守屋武昌前防衛事務次官の国会での証言が波紋を広げています。
守屋氏は11月15日、参議院の外交防衛委員会で以下のような趣旨の証言をしました。

「ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長が日本に来て、何人か東京・神田の料亭に集まって時、私(守屋氏)が行ったら、そこに宮崎(元伸・山田洋行元専務)さんが来て、それから額賀(福志郎・財務相)先生が来て、額賀先生が最初に帰っていった。一昨年だと思う」

周知のように、守屋氏はすでに逮捕された宮崎容疑者らからさんざんに接待や供応を受けていたことを自ら認めています。その守屋、宮崎両氏との宴席に国会議員の額賀氏が出席していたとなると、別にそれだけで罪になるわけではありませんが、疑惑を生みかねません。民主党は必死で追及しています。

しかし額賀氏自身は「そんな同席の事実は記憶にない」と否定しています。
そこで焦点となるのは、ジェームズ・アワー氏の対応です。そもそもこの会食がアワー氏のために開かれていたというのです。

その後の調査などで、この会食は2005年12月4日に財団法人「国際研修交流協会」が東京・日本橋人形町の料亭「濱田家」で開いたことが判明しました。その直前の同12月1日に同交流協会が主催したセミナーでアワー氏が講師として講演をしたことに同協会側が感謝しての御礼の会食だったそうです。会食の主催は同協会の理事長の幕田圭一氏でした。幕田氏は東北電力の取締役会長です。同協会も11月26日、「この会食には額賀氏は出席していない」という声明を発表しました。

アワー氏も同協会よりは先に「私は記憶する限り、額賀氏といっしょに食事をしたことはこれまで一度もない」と言明しました。守屋氏や宮崎氏と会食をしたことは覚えているが、自分はこれまで日米防衛関係の政策面にいろいろな形で関与はしてきたものの、
企業を代弁したり、企業に雇われたことは、まったくない、とのことでした。アワー氏も守屋証言とは反対の趣旨を証言するわけです。

さてこのアワー氏は私の旧知でもあります。こちらは日本の新聞記者、アワー氏はアメリカ国防総省の日本担当官でした。当初はあくまで取材対象としての知己でしたが、その後の長い期間のうちに個人的な交流もあるようになりました。しかしそのことと、今回の事態とは関係がありません。私はその会食についても、アワー氏の日本での活動についても、まったく知りません。ただしアワー氏本人が額賀氏と一緒に食事はしたことがない、と述べ、軍事関連などの企業を代理することも、これまで皆無だった、と強調していることだけは、その言葉どおりに報告しておきたいと思います。

さて、アワー氏とはどんな人物なのでしょうか。
下が彼の写真です。

sakura


アワー氏のプロフィールは以下のとおりです。
 
1963年、アメリカのマーケット大学を卒業後、米海軍将校に任官、以後、1983年まで海軍勤務、その間、海上自衛隊幹部学校に留学、米海軍大学に学び、タフツ大学のフレッチャー法律外交大学院で博士号を取得する。横須賀を母港とする米海軍フリゲート艦の副艦長も務める。1979年から国防総省の日本部長となり、カーター、レーガン両政権下で同ポストに就いて、日米安全保障関係を担当する。1988年秋からテネシー州ナッシュビルのバンダービルト大学の教授となり、同時に同大学の「日米公共政策研究協力センター」所長となって、現在にいたる。著書には「よみがえる日本海軍」(時事通信)などがある。

そのアワー氏と私がたまたま雑誌SAPIOの最近号で対談をしています。
今回の守屋発言とは直接の関係はありませんが、アワー氏がふだんはどんな活動をしてきたかが、明らかになると思います。
日米安保関係の現状や展望についての対談でした。
以下、その内容を紹介します。


古森義久 私がアワーさんを最初に知ったのはカーター政権の終わりの時期、一九七九年でした。あなたは当時、海軍士官のまま国防総省の日本部長として赴任してきた。それからもう二十八年もが過ぎたわけです。この長い年月、日米安全保障の米側専門家としてのあなたと、日本人ジャーナリストとしての私が論じあってきたテーマは常に日米関係であり、日米同盟でした。いま個人レベルでの回顧をも含めて、そうした過去の両国関係の変遷を振り返ると、日米間の安全保障関係が一つの大きな曲がり角にきたと感じてしまいます。

簡単にいうと、今や日米同盟は揺らぐようになったと感じます。堅いきずなが緩んできた。同盟に暗い影がさしてきた。そういう印象を受けるのです。その理由の一つは、日本が対米安保協力の意味をもこめて実施してきたインド洋での海上自衛隊による給油活動が唐突な形で終わったことです。第二には、ブッシュ政権が北朝鮮の核問題の進展のために、日本の反対を無視する形で、北朝鮮を「テロ支援国家」から外す方向に動いていることです。そしてその背景には、今年夏のアメリカ議会下院による日本非難の慰安婦決議案の採択があります。この決議は日本側で年来、日米同盟を最も強く支持してきた陣営を最も失望させる結果となった。こうした諸要因が日米安保関係を冷めた状態にして、将来の展望にも影を投げていると思います。もっともこういう状態は日本が安全保障でこれまでよりも自立を目指さねばならない、ということかもしれません。

ジェームズ・アワー 日米関係は二〇〇一年から二〇〇五年ごろまではとくに「蜜月」といえる堅固で緊密な状態でした。いま思えば、その期間は古森さんと意見を交換してきた三十年近い年月の間でも、日米関係の最高の状態だったかもしれない。現在は確かにそれより低い水準にあるでしょう。しかし私はなお希望的です。インド洋からの自衛隊撤退にしても、日本の政府が自ら撤退を決めたわけではない。政府は継続を強く望んでいるのに、野党の民主党が反対したからです。しかしなお政府が努力して、新たな立法措置をとり、また給油活動を再開できることに私は希望を抱いています。

北朝鮮を「テロ支援国家」の指定から解除するという話も決まったわけではない。ブッシュ大統領は小泉、安倍両首相とは非常に緊密なきずなを保ち、その状態を福田首相との間でも続けたいと願っていることは間違いない。だから日本の苦しい立場に追い込むような決定は下さないのではないでしょうか。ヒル国務次官補は確かに指定を解除することを示唆はしている。だが最終の権限は大統領にあります。ブッシュ大統領は日本に不利となる形でその種の解除はしないことを私は期待しています。

古森 こうした日米間の問題が起きた際、日本側では慰安婦決議が影を広げ、日米同盟を支える努力への意欲をそぐ形の作用を果たします。

アワー 日本側の同盟支持者たちが慰安婦決議に失望したことは当然であり、よく理解できます。私もまた失望しました。しかし慰安婦決議と日米同盟の間には直接のリンケージはありません。慰安婦決議案は民主党が多数を占める下院で採択されました。民主党は政権を握っているわけではない。現政権を困らせるためという政治的理由でこの決議案を通したといえましょう。そんな決議が日米関係に影響を及ぼすことはないだろうし、あってはならないのです。ただし大統領はこの慰安婦問題での日本側の懸念を十分に意識する必要があります。

古森 日米双方が二国間の同盟を当然視しすぎてきた、という側面もあると思います。

同盟は長い年月、うまく機能し、着実に維持されてきた。最近のアメリカ議会ではアルメニアの虐殺を糾弾する決議案を審議する下院外交委員会では、委員長のラントス議員がおもしろい発言をしました。アルメニア決議案を通すと、トルコが反発し、アメリカの安全保障に重大な悪影響を及ぼすという向きがあるが、日本の慰安婦決議案の例をみるがよい。なにも悪影響は出なかったではないか。だからトルコについても心配することはない。こんな発言をしたのです。

民主党長老のイノウエ上院議員らは『こんな日本糾弾の決議案を通すと、日本が反発して、日米同盟に悪影響が起きる』と主張し、慰安婦決議案に反対していたのです。現実には確かに日本側では表面に出る悪影響はなかった。しかし目にみえない侵食が大きいのです。ラントス議員はその深層での悪影響を無視している。日米同盟の不変な継続を当然視しすぎているということだと思います。

一方、日本側にもアメリカが日本との同盟をいつも重視し、日本側の安保がらみの要請には必ず応じてくれるという当然視の傾向、甘えの傾向があるでしょう。拉致問題でブッシュ政権は必ず、いつまでも日本の立場を支持してくれると思いこむのも、その種の甘えからも知れません。

アワー その点では日米両国がいつも慎重に対応せねばなりません。日米同盟は日本にとっても、アメリカにとっても非常に重要なのです。だから両国ともそれを当然視してはなりません。古森さん、国防次官補などを務めたジョセフ・ナイ氏の言葉を覚えていますか。『日米関係は酸素のようだ。なくならない限り、だれもその価値を意識しない』という意味の言葉です。それに対してラントス議員の発言ですが、彼はすでにトルコの対応については間違っていたことが証明されました。(以下は省略)


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コメント(9)

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2007/11/27 16:51

Commented by venom さん

アワーさんも大変ですな。
しかし慰安婦決議については、マイケル・グリーンさんの「これは人権問題で、被害者はか弱い女性なのだから、日本がいくら抗弁しようと、政治的な勝利を収めることはない」という言葉が忘れられません。
アメリカ政府も、「一部民主党議員」の暴走を止めようとはしなかった。

 
 

2007/11/27 17:21

Commented by くぼた さん

こんにちは
小森さん

ジェームズ・アワー氏のご紹介有難うございます。
それにしてもジェームズ・アワー氏にも大変なご迷惑をかけたものですね。

>この会食は2005年12月4日に財団法人「国際研修交流協会」が東京・日本橋人形町の料亭「濱田家」で開いたことが判明しました。その直前の同12月1日に同交流協会が主催したセミナーでアワー氏が講師として講演をしたことに同協会側が感謝しての御礼の会食だったそうです。会食の主催は同協会の理事長の幕田圭一氏でした。幕田氏は東北電力の取締役会長です。同協会も11月26日、「この会食には額賀氏は出席していない」という声明を発表しました。

民主党は会食の同席者からの証言で額賀氏が座った場所まで分っているという。今日午後2時、自民党大島国対委員長の会見では額賀氏は同時刻頃別の勉強会に出席していて議事録、録音までが存在していると当日の同席を否定反論した。

おい、民主党さん今の主張を偽証罪が適用される場所で証言できますか?
伝聞ばかりで国会を停滞させた罪は大きいぞ!ガセだったら代表辞任ではすまないと思いますが・・

 
 

2007/11/27 17:44

Commented by hanehan さん

民主党が国政を壟断すれば、日本が亡くなってしまいます。
『伝聞』や『捏造』にいとも簡単に引っかかるのを繰り返すようでは、『政党』と呼ぶ事自体国辱ではないでしょうか。

 
 

2007/11/27 18:13

Commented by jess-kun さん

古森記者、こんにちは。
どなたかがどこかで、SAPIOの記事を知っていて「古森記者は、アワー氏の真相を報道する責任がある」みたいなことを言っておられましたが、わたしは“古森記者はアワー氏の行動を探る必要性はなく、その責任もない”と思います。SAPIOでの対談と、アワー氏の弁明は無関係です。
しかしブッシュ政権から沈没が予見される船からネズミが逃げるように、知日派のアワー氏をはじめとする方々が離れていくのは、やはり日本にとってのマイナスでしょうね。
福田首相もここは一つふんどしを締めなおし(失礼!)、安倍首相の唱えられた「戦後レジュームからの脱却」という意味を、もう一度深く考えて欲しいものです。
古森記者がおっしゃる
>もっともこういう状態は日本が安全保障でこれまでよりも自立を目指さねばならない、ということかもしれません。<
の如く、やはり日本は自分の頭で国防を考える時期かもしれませんね。

 
 

2007/11/27 18:55

Commented by truth-of-truth さん

民主党の情報源は、守屋氏本人のようですね。
だから、両者の喚問によって、黒白をはっきりさせなければならないということのようです。

額賀さんにはアリバイがあるように伝えられていますが、短時間の出席は可能だったという見方もあります。

まさに、西村京太郎の世界ですね。

 
 

2007/11/27 18:59

Commented by identification さん

日米同盟にとっては、ここに至れば慰安婦問題も給油問題も余り大した話ではないと思いますが。むしろ、北朝鮮の核保有が核心であるというNHKの手嶋元ワシントン支局長の指摘に賛同します

手嶋
 「日米同盟の基本的構造に、今、変化が起きています。もっと言えば、空洞化を生じている。・・しかし、北朝鮮の核が拡散しない限りは、米国本土に北朝鮮のミサイルが届くわけではないので、事実上、容認しようという方向に傾きつつあります。・・こうした米国の本音を日本のジャーナリストは本来、伝えないといけないのですが、日本のメディアがその役割を果たしているとは思えません。・・ですから、米国は事実上、北朝鮮の核を黙認しているのです。長引くイラク占領によって米国はもはや東アジアを管理する力を持っていません。・・この状況を安閑と見ておらず、自分たちの手で自分の国の安全保障や危機管理をすることを決断し、行動するべきでしょう。」
佐々淳行
 「6カ国協議韓国と北朝鮮の南北会談によって、朝鮮半島のヘゲモニーは名実ともに日本から中国に移り、米国がそれを認めたのだと思います。その結果、排日核武装朝鮮半島が生まれ、その切っ先は日本に向かっている。
 これは米国の背信行為であり、ミサイルも拉致問題もこれでは解決しません。もはや日本は自分で自分を守るしかないのです。 とはいえ、いきなり核武装はできるわけはない。まず、ミサイル防衛体制を作ることが必要です。そのためにペトリオット3型の緊急導入と、イージス艦のミサイル装備が急務です。」
手嶋
 「佐々さんは本来、強固な日米同盟論者だと思うが、その佐々さんが米国は日本に対して背信行為を行ったとおっしゃった。わたしもその通りだと思います。東アジアについて、米国6カ国協議に委ね、その議長国に中国がなることを認めました。東アジアのヘゲモニーは中国に渡すということでしょう。しかし、まだ絶望するには早い。日本では官民、大学などが加わって、民を中心とした新しい危機管理も生まれつつあり、そこに期待しています。 」

 
 

2007/11/27 19:51

Commented by char さん

こんにちは。
額賀さんは大臣になるたびに引責問題が浮上し、たいへんですね。しかし今頃になって議事録とかテープが出てくるちゅうのも何なんでせうか。いづれにせよこんなことは早々に決着さして海自をインド洋に戻すべきです。エネルギー安保のためにも。
それと、アワーさんをみてますと、肩書きはちがいますがライシャワーさんを彷彿とさせます(といってもぼくが生まれた年に大使を辞任なされてますが)、知日派といふよりも親日派といふかんじです。

 
 

2007/11/27 20:38

Commented by hanausagi さん

古森さん

この記事はSAPIO11/28号の記事で私も拝見しました。非常に心が安らいだのを覚えています。

アワー氏本人が額賀氏と一緒に食事したことはないと言明しているのですから、また民主党の病気の再発でしょう。

ただ、こういう知日派、親日派の大物がブッシュ政権中枢にいないということが我々にとっては辛いことですね。

 
 

2007/11/27 20:51

Commented by starbeast さん

古森様、お邪魔します。
在日米軍の意味がここに改めて確かめられるインタビューですね。日本赴任を複数回こなし、総省に戻ったり軍のポストを上り詰めたり…日本赴任時に「日本をよく知る」人がいることは日本にとって強みにもなるでしょう。(もっとも、「見透かされる」と言うことがあるのかもしれませんが)

さて、中東和平がようやく動き始めましたね。Bush政権が任期を終えるまであと1年、以前のIsraelであれば「民主党政権の誕生を待つため時間の引き延ばし」を行うでしょうが、今回はどうでしょうか?Palestine側にとって仮に民主党政権が誕生した場合よりも、今の方が都合がよいと考えるか否か。ここの動き次第によっては6ヶ国協議にも影響を与えるのではないでしょうか?Iraqの動きが沈静化し、中東和平が進み始めたとなれば、「無理に北に甘い顔をする必要もなくなる」…こいつは希望的観測かもしれませんが。

 
 
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2007/11/27 17:00

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2007/11/27 19:59

古森義久氏、ジェームズ・アワー氏を語る。 [黙然日記iza!別冊]

 

守屋武昌前防衛次官氏が名をあげたジェームズ・アワー氏とは何者か-ステージ風発:イザ! http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/404599 守屋前次官証言に関連して注目されている、ジェームズ・アワー氏について、親…

 

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