内野聖陽さんの「風林火山」トーク2

“勘助らしさ”の表現

あえて異形を強調

 勘助は子どもが恐がるほどの異形の男だったと伝えられています。そのことは勘助の人格形成にも、おそらく相当な影響を及ぼしたのではないかと思いますね。だからこそ僕は彼が左目を失ったこと、眼帯を取った瞬間、あらわになる目の傷にこだわりたかったんです。
 左目に入れるコンタクトレンズは自然に見えるものを選んだつもりですが、やはり全部目を開くとコンタクトレンズということが、すぐにわかってしまう。とても嘘くさく見えてしまうので少し半眼にしたり。また傷の特殊メイクも試行錯誤を繰り返した結果、いまのような形に落ち着きました。



 こうして完成した“勘助メイク”ですが、ふだんは眼帯をしているのであまり披露する機会はないですね。逆に常に開いている状態の右目がどんどんぎらぎらしてきた(笑)。顔の筋肉も常に使っている方が表情豊かだったり。この状態で1年経つと顔の相が変わって、リハビリが必要になるかも(笑)。
 柳生十兵衛役を10年近く演じられた千葉真一さんからも『内野くん、眼帯は気をつけたまえ、目をやられるから』とご忠告をいただきました。それ以降、アクションシーンでは、なるべく目の部分が透けている眼帯をするようにしてます。

殺陣にも独自の工夫

 勘助を演じるにあたって最初に思い浮かんだのは、ハンディキャップがある分、五感が研ぎ澄まされているんじゃないかということでした。嗅覚や聴覚が発達していることで、意外な反応ができたら面白いんじゃないかと。人より敏感に音や匂いで反応するお芝居も時々入れたりね。
 立ち回りも本番直前まで殺陣師の方と相談しながら『こうしたら面白いんじゃないか』というのを探りながらやっています。やはり左足が不自由で左目が見えないという設定なので、死角に回られたり、死角を攻められると弱い。そういうハンディキャップを背負いながらの殺陣の面白さ、迫力の出し方というのもあります。ただし、あまり悲壮感は出したくないので『多少の不自由は関係ない!やる時はやるんだ』という気合いを大事にやっています(笑)。
 それにしても第1話の冒頭で『それがしは青き月影、お屋形様は燃える日輪』と言っているのですが、仕官前の勘助は自分自身が“燃える日輪”みたいになってますね(笑)。
 しかし、勘助が武田家に仕官してからは逆転していかないと困ります。その時には“裏で操る軍師”としての面白みというか、知謀策略を駆使して『兵は詭道なり』という信念にのっとった戦略を立てていく姿を、今度は静かな狂気を伴った芝居でお見せしていきたいですね。どちらにしても情熱的な勘助なのですが、後半はそれを零下の情熱に持っていきたいと思っております。ぜひ、楽しみにしていてください。

 
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