インターネット上だけで株式の売買を仲介するネット専業証券が日本に登場してわずか7年。いまや株の個人投資家の8割以上がネット取引を利用しています(日本証券業協会、東
京証券取引所の資料から計算)。そこで、ネット取引が人気となった理由から、お店での取引との違いや、利用するときに気をつけるべきポイントまで、こ
れから株式投資を始めるといった初心者にも分かりやすく具体例を紹介しながら解説していきましょう。
第1回 手数料が安い
個人投資家の株取引がネット証券に大きく流れた理由のひとつに、取引に必要な手数料の安さがまず挙げられます。
株を買ったり、売ったりする際には証券会社に注文を出し、取引を仲介してもらう代金として「売買委託手数料」を支払います。証券会社の店舗で注文する場合と、ネ
ット証券で注文する場合の手数料を比べると最大で20倍以上もの開きがあるのです。
売買委託手数料は基本的には株式を売買する際の金額(約定金額=株価×株式数)に、手数料率を掛けた金額となります。約定金額は株価1000円の株式1000株を買うか売るかする場合だと
100万円となります。
手数料率は約定代金の多寡のほか、証券会社によっても設定が異なりますが、約定代金が 100万円とすれば、大雑把にいって店舗で取引する際の手数料は1万円弱です。こ
れがネット証券だとおおむね1000円弱。なかには 500円を切るケースもあります。
特に、短い期間、場合によっては1日のうちに何回も株式を売買して小幅な利益を積み上げていく手法を好む個人も少なくありません。「デイトレーダー」と呼ばれる人たちがその代表です。株
価1000円の株が50円高となったとして、1000株保有していた場合の値上がり益は5万円。同じ 100万円の投資でも1回の取引コストが1万円と1000円では、利益がずいぶんと変わってしまうわけです。も
ちろん値下がりしていても売買委託手数料は支払います。
一般の証券会社とネット専業証券との間で、手数料にここまで大きな差が出る理由は、店舗を構えているかいないかの差が大きく影響します。店舗を維持する費用や人件費をまかなう必要があるからです。店
舗とネットの両方での取引を提供する証券会社の場合だと、やはりネット取引の手数料はネット専業の証券ほどには安くないケースが多いのです。
もちろん、有望な企業の情報や投資のアドバイスを対面で受けられるなど、店舗ならではのサービスの内容や水準がありますから、一概にネット専業証券ばかりがお得だとば言えません。し
かし投資する株式の銘柄をじっくり選び、長期間持ち続けて値上がりに期待する投資家にとっても、コストはコスト。負担はできるだけ軽くしたいと考えるのは誰でもが思うことですし、個
人がネット取引へとシフトするのも自然な流れとはいえるでしょう。
もうひとつ、電話で注文する方法もあり、ネット専業証券でもほとんどが提供しています。手数料は約定代金 100万円で2000−3000円といったところです。電
話対応するオペレーターを介さない自動応答型の場合だともう少し安くなります。パソコンの故障や通信回線の不調など、いざという時のためのものとして覚えておくと良いでしょう。 =「ネット株入門」は
毎週金曜日に更新します。
(大和田智美 ストック・リサーチ取締役、1966年生まれ、法政大学経営学部卒業、証券会社、出版社を経て、ITビジネ ス評価会社「ストック・リサーチ」を2000年に設立)