◇札幌市、来年度から助成金削減方針
留守家庭の子供を放課後に預かる共同学童保育所に対し札幌市が来年度から助成金を削減する方針を打ち出した。理由は厳しい財政事情にあるが、1人の女性が一生に出産する子供の数を示す合計特殊出生率が道内平均の1・18を大きく下回る1・03(06年)と低迷する中、助成金削減が子育て環境を悪化させ、一層の出生率ダウンにつながりかねないと反発する声も大きい。助成金削減に揺れる学童保育所の現状を探った。【千々部一好】
□■遊びで培う力
小雨が降り続く住宅街の一角。借り上げ民家でメンコやトランポリン、ピアノで遊ぶ子供たち。大好きなサッカーや陣取りゲームなどの外遊びは雨の日はお預け。小学生35人が通う札幌市豊平区の共同学童保育所「しらかば台つばさクラブ」(石塚純一会長)だ。
保護者が共働きなどで留守となる子供の放課後の居場所づくりを目的に、86年春に開所した。障害児も受け入れるのがここの特徴で、養護学校に通う児童ら障害児14人がいる。
「ただいま」。子供たちは放課後、大きな声を出しながら集まってくる。まるで第二の我が家だ。まずおやつで腹ごしらえし、遊びに夢中になって夕方まで過ごす。
開所以来、指導員を務める安藤京子さんは「今の子供はテレビゲームに漫画と、外遊びが少ない。会話もない。ここでは年齢に関係なく、みんなで楽しく遊ぶ。けんかもありますが、子供たちは遊びを通じて、仲間との接し方を自然に学び、コミュニケーション力を高めます」と話す。
□■高まるニーズ
札幌市内には留守家庭の小学生が放課後に通う場所に、学童保育所が53カ所あるほか、公営の児童会館を拠点とした児童クラブが139カ所、学校の空き教室を利用した児童育成会7カ所がある。少子化の中で、これらの施設に通う子供は昨年度が8415人。5年間で3割近く増え、保護者のニーズは高まっている。同市は児童クラブを小中学校の各校区200カ所に拡充し、保護者が仕事を持つ留守家庭の子育てを支援する方針。
しかし、同市は厳しい財政事情から、学童保育所への助成については来春から削減することを検討している。今年度の助成金総額は約1億8000万円。国の基準額に市独自で上乗せしており、これを「国並み」にすれば約5000万円削減できるという。
各学童保育所への助成額は児童数によって違うが、同市学童保育連絡協議会(菊地千佳子会長)の試算では、児童が46~70人の場合、現行の年間助成額約420万円から最大120万円の減額になる。学童保育所は昨年度に3カ所が閉鎖されるなど経営状況は厳しく、助成額が減れば追い打ちをかける形になる。
市こども未来局は「市財政構造改革プランでは歳入不足が10年度に300億円以上となる見通し。学童保育に限らず、市が独自に上乗せする助成金は国並みに一律削減する大号令が出ている」(こども企画課)と話す。
□■助成金が3割強
学童保育所の運営は、保護者負担と市の助成金が柱。保護者が支払う平均月額1万4000円の会費が運営費の半分を占め、助成金が3割強。足らない部分は、各学童保育所が知恵を絞り、バザーや物産品販売で補てんしている。
しらかば台つばさクラブに子供2人が通う保護者で、会計担当の石橋ちえみさんは「借りている畑の農産物販売のほか、シイタケや花火の委託販売など、少しでも収益を上げようと涙ぐましい努力をしています。助成金削減は死活問題です」と窮状を訴えている。=金曜日に掲載します
毎日新聞 2007年11月23日