2007年11月26日
金をもらったらアマチュアではないのか
アイマスMAD界隈を騒がせている、ツンデレカルタ騒動に関して。
私自身としては、「そこまで騒ぐことでもないだろう」と思うのですが、ここまで騒ぎになってしまったので、一応アイマスMAD製作に関わってる(っていうか、もろに足を突っ込んでいる)身として、ちょっと書いてみたいと思います。
まず、自分の立場を表明しておくと、
- アイマスMAD製作者(このためにXBOX360とアイマス買ったようなダメ人間)
- 再生数的には底辺(一度だけ週刊アイマスランキング掲載経験あり)
- 今回の関係者とは、個人的な交流はまったく無し
- 神藝工房とかが活動していた時代は、基本的に見る専。仲間内に見せるためだけにMAD作ってた
といった感じ。
さて、今回の企画で問題になっている点は、
- スタッフとして、アイマスMAD作者が「P」(プロデューサー。アイマスゲーム内で、プレイヤーは「○○P」と呼ばれるところから転じて、MAD作成者をP名で呼び合う風習がある)付きで名前を出している
- 釘宮理恵さんを起用している(釘宮さんは、アイマスで「水瀬伊織」を演じている声優さんです)
- 売り物である(入手には金銭が必要)
といったあたりでしょうか。
1番目について。アイマスMAD製作者が名を連ねている、と話題になっていますが、もう一度よく見てみましょう。
企画 : ゆめみP
読み札協力 : ニセP ZOZP kakaoP 加倫P 豊本・葉咲P 京都P 江頭P ぴぴるP 井川KP
アイマスMADをよく見ている人なら分かると思いますが、全員が「有名P」かというと、そうではないのですよね。たとえば、「ZOZP」や「加倫P」をググっても、今回の騒動以外の記事がほとんど出てこなかったりします(11/26現在)。
さらに、企画がゆめみP。
おそらくは、「ゆめみPを中心としたアイマス好きのコミュニティが企画を制作会社に出したところ、OKが出た」といった感じなのではないでしょうか。
ですので、彼からから見たら、「P名を名乗るのが当然」なのだと思います。アイマスプレイヤーであることが、彼らのコミュニティーの原点なのですから。
ただ、上記の話はあくまで推測です。そして、その経緯や事情が見えていないことが、おそらく今回の騒動の一因だと思います。
ここまで話題になってしまった以上、彼らはきちんと事情を説明すべきだと思います(謝罪は不要ですが)。
次に、2番目、釘宮さんを起用した件について。
声優事情にある程度詳しい人なら、「釘宮さん=ツンデレ」というイメージが焼きついているかと思います。
今回の企画が、「始めにツンデレありき」だったのか、「始めに釘宮ありき」だったのかは分かりませんが、「ツンデレカルタ」という企画で、釘宮さんを起用するのは当然の流れだと思います。
「これがアイマスMADに使われるのでは」という意見もあるようですが、そもそも、MADってのは、ある作品と別作品を合成して作られる物がほとんどなわけですよ。特に、音声編集ものでは、「声優ネタ」というのは、定番中の定番です。
私は釘宮病ではないのであまり判別ついてないのですが、「罵ってけ!へんたいたーれん」とか、他の釘宮キャラの声も使ってますよね、たぶん。
っていうか、瞳子や葛が「変態! ど変態! Der変態!!」と罵ってくれるMADはまだですか(ォィ)。あと、「釘宮=ツンデレ」だけではアレなので、「井○喜○子17歳おねえちゃんカルタ」や、「能○・生○目・植○・松○などを起用した百合カルタ」などを希望します(爆)。
最後、お金の問題。あー、嫌ですね。お金が絡むと途端に粘着してくるやつ。
これも、1番と同様、向こうが情報開示をする必要があるかと思います。正直、お金の件については、私には推測すらできない。
「アイマスP名を出して金儲けしていいのか」という意見もあるようですが、その名を使って詐欺を働くならともかく、関わった人間が誰かを示すために、その名を使うこと事体は決して悪いことではないと思います。
例えば、私はコミケで同人誌を売っていますが、もしかしたら、私の名前をアイマスMADで知って、サイトに上がっている小説を読んだら面白かったので、コミケで私の本を買うことにした、という人が、もしかしたら(1億人に1人くらいは)いるかもしれません。それは、アイマスP名を使った売名行為ですか?
おそらく、こういうことで騒ぐ人の心中には、「アマチュアが金儲けするな」という考えがあるのだと思います。
しかし、アマチュアとプロフェッショナルの境界、というのはどんどん曖昧になっているのが現実です。
路上ライブから見出されてプロミュージシャンになる人、同人作家から職業マンガ家になる人、在野のプログラマが腕を買われて就職、なんて例は枚挙に暇がありません。逆に、職業マンガ家だけど同人誌も描いてる人、職業プログラマで個人としてオープンソースにも参加してる人なんていくらでもいますよね。最近では、本職がニコニコ動画に作品を投稿して話題になったりもしています。
「初音ミク」を生み出した、クリプトン・フューチャー・メディアの社長が、インタビューの中で次のようなことを述べています。
人間はそもそもプロシューマだと思うんです。
個人ですべてを行うのは効率が悪いので、分業が進み、都市が形成され、経済システムが構築されました。
そもそもプロシューマだった人間が、生産者と消費者に分かれ、なぜかそこには大きな溝までできてしまっています。
CGMの登場をきっかけとして、人類の歴史をさかのぼるというような動きが生まれているのではないでしょうか。
CGMの本質は社会全体の在り方を変えていくというところにあると、わたしは思っています。
明確に分かれていた生産者と消費者。でも、もともとは全ての人間が生産者であり消費者だった。そして、その流れが再びよみがえろうとしている。この流れが戻せない物であるのは、誰の目にも明らかだと思います。
生産者と消費者の区別がつかなくなるということは、誰にでも自分の作品でお金を手にする機会ができる、ということに他なりません。逆に、無料で作品を公開するのも自由。「お金を手にしたからプロ」という妙なアマチュアリズムは、どんどん通用しない考えになっていくでしょう。
お金については、いろいろ難しい問題を孕んでいるのは確かです。しかし、「生産物に対する対価」という、お金の持つ本来の意味を考えれば、どのような生産物であってもお金を受け取る権利があるはずなのです。あとは、それにお金を払う人がいるかどうか。つまり、「市場」の存在ですね。良いと思った物にはお金を払い、それを入手する。悪いと思ったものはお金を払わない代わりに、入手しない。ごくごく簡単な、市場原理です。
あと、「バンナムが何らかのコメントを出すべきだ」という意見も耳にしますが、これも不要かと。アイマスMADにバンナムは関わっていないし、関わるべきではない、というのが持論です。
もし、バンナムが「白」と言ってしまえば、MADで使用されている楽曲の著作権者が、バンナム相手に訴訟を起こす可能性が出てくるでしょう。また、「黒」と言ってしまえば、アイマスMAD界は崩壊し、結果としてアイマスというゲーム自体が終了してしまいます。ついでに言えば、どちらに転んでも企業イメージはマイナスです。
というか、今回の企画、アイマスとは直接の関係は無いですし。
最後に。私はアイマスMADが好きです。すばらしい作品に何度も出会いましたし、自分の作品にも様々な評価をいただいています。
おそらく、今回騒いでる人も、アイマスMADが好きだからこそ、話題にしているのでしょう。ですが、それがために特定の人を叩くような行為に出るのなら。それは、アイマスMADという世界を壊す要因にもなり兼ねません。
議論は大いにされるべきだと思いますが、それはヘイトスピーチを撒き散らすのではなく、「みんながニコニコできる」方向に進めるためにすべきだと思います。
以下のサイトや書籍等が参考になるかもしれません
Comment on "金をもらったらアマチュアではないのか"
Post a Comment
Trackback on "金をもらったらアマチュアではないのか"
このエントリーのトラックバックURL:
※ トラックバックを送信する際は、トラックバックspamフィルタの適用についてを熟読の上、送信をお願いします。この記事へのリンクの無いトラックバックは受け付けられません。
"金をもらったらアマチュアではないのか"へのトラックバックはまだありません。
そもそも、アマチュアの定義は「競技によって報酬を得ない」ということを指すので、「金をもらったらアマチュアではないのか」というのは変な問題提起です。
ただアマチュアリズム自体は、スポーツから労働者階級を排除するために援用されてきたという歴史を持ってまして、最近ではスポーツの世界で声高に叫ばれることはあまりありません。(高野連なんかは違うみたいですけど)
この件では(著作権法違反に直接関係していないので)報酬ももらっても全く構わないと思います。MADで売名して報酬をもらっているようなものだという意見もあるでしょうが、そういう行為をすれば当然著作権者に目をつけられ、訴えられるリスクが増すわけです(同人誌なんかで顕著)。だから別にいいのではないでしょうか。
基本的にMADは犯罪行為に抵触するので、何があってもおかしくはないと思いますけど…
フラッシュ全盛期時代からこの問題はいろいろあってお金が絡むから駄目とか、釘宮さんを使うから嫉妬してるんだとかそういう単純な答えには帰結できないんですよ。多分分からないと思いますけど
まあ、大概の人間は勝手にやってて良いけど『こっち側』に接してる部分は残して欲しくない、放っておいてやるからそっちも一線は引いてくれ、ってことになるかと