土鍋に入った猫たちが大人気になっている。「ねこ鍋」という。鍋物が恋しい季節だけに、初めて聞いた人はびっくりするに違いない。
岩手県の農家で、植木鉢のかわりにしていた土鍋に、子猫が入って寝てしまったのがきっかけだった。その様子を撮影してインターネットの動画サイトに投稿したところ「かわいい」「癒やされる」と反響を呼び、ブームに火が付いた。
体を丸めて土鍋の中に収まり、気持ちよさそうに眠る姿が、猫好きにはたまらないらしい。確かに見ていると、心がなごんでくる。DVDに続いて、写真集も発売されている。年末恒例の今年のヒット番付に食い込みそうだ。
「ねこ鍋」で、思い浮かぶのが、文部省唱歌「雪」の一節「猫はこたつで丸くなる」。寒さが苦手な猫は季語にもなっている。「炬燵(こたつ)猫」のほかに「竈(かまど)猫」。家にかまどのあった時代には、猫はかまどのそばで丸くなっていた。
「かじけ猫」というのもある。「かじけ」とは「かじかむ」や「かじく」からきた言葉で、寒さで縮こまった様子を表している。背を丸めた猫の姿は、冬という季節を表す象徴だったわけだ。
こたつならぬ土鍋で丸くなる「ねこ鍋」。ほんわかとした温かみが、いよいよ冬本番という今の季節に妙にマッチする。ペットブームもあろうが、癒やしを求める社会現象の一つといえるかもしれない。