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【特報 追う】救急搬送“命の一秒”縮めろ

2007.11.26 01:04

 病院までの救急搬送にかかる時間、5年連続全国ワースト2位。そんな不名誉な記録を更新中の宮城県が、汚名返上を狙って自治体初の「全国調査」に乗り出す。搬送の遅れは命に直結する問題であり、1分、1秒でも短縮してほしいもの。医療・福祉先進県をうたいながら、これまでなぜ迅速な搬送ができなかったのか。関係者からはさまざまな声が上がった。(山口圭介)

 消防庁によると、平成17年における119番通報を受けてから救急車が患者を医療機関に搬送するまでの所要時間は全国平均で31.1分。宮城県は平均を3.2分上回る34.3分で、最下位の東京都(43.2分)に次ぐ46位というお寒い状況が続いている。

 8月に奈良県の妊婦が救急搬送時、病院探しが難航して死産した事件は記憶に新しい。11月11日には福島県で、車にはねられた女性が病院から計8回受け入れを拒否され、約1時間後に病院に運ばれたが、約6時間後に死亡する事件があった。治療の遅れと死亡の因果関係は不明だが、搬送の遅れは深刻な事態を起こしかねない。両県とも所要時間が下位に低迷している自治体で、時間短縮は社会的課題といえる。

 自治体ごとの搬送時間の傾向について、消防庁救急企画室は「香川など面積の狭い自治体に比べ、宮城など広い県はどうしても遅くなる」と語る。宮城県医療整備課は「交通事情も一因では? 東北の中心地の仙台では渋滞がひどい」と指摘する。

 一方で気になるデータもある。救急車が現場に到着するまでの平均所要時間では、宮城県は35位前後をキープ、病院までの収容時間と比べ順位が10前後も上がるのだ。

 消防庁救急企画室は順位の違いを「現場到着後の受け入れ先病院の選定など、医療機関との連携に問題があるのかもしれない」と分析する。実際に仙台市消防局では、救急搬送の3割が医療機関から1度は受け入れ拒否にあうという。

 拒否の理由として挙がるのは、医師が手術中▽救急用ベッドに空きがない▽設備が整っていない−などだ。「医師不足に加え、携帯電話の普及で軽傷でも通報する人が増え病院が忙しくなっている」と市消防局はみている。

 一方、消防庁救急企画室は「都市部の病院ほど、受け入れを拒否する傾向がある。宮城は人口が多く、病院数も多い。『他の病院がやってくれるだろう』と意識してしまうかも」という。宮城県内のある消防本部からも「実際は受け入れ可能な場合もあるのでないか」との声が聞こえてきた。

 総務省行政評価局が9月にまとめた調査では別の要因も浮上。医療機関と消防本部などをネットワーク化し迅速な救急搬送を可能にする「救急医療情報システム」が機能していない実態が表面化したのだ。

 同システムには県内の127の医療機関と12の消防本部が参加し、宮城県が運営。しかし病院側の受け入れ状況データの入力が低調で、大半の消防本部が「データが最新ではなく、ほとんど利用していない」と行政評価局に回答した。中には半年以上入力していない病院もあったという。同局は「宝の持ち腐れ」と、厚労省に改善を勧告した。

 この指摘に、県医療整備課は「病院側の対応だけが原因と判断されるのには違和感を覚える」と反論。「理由は1つではないはずで、何が一番の問題なのかはっきりさせたい」と全国調査を提案した。

 県消防課によると、来年1月に全国順位が公表される18年中の宮城県の搬送時間は、さらに延びて34.7分という。全国調査から県はどんな施策を導き出すのか。遅れる言い訳だけは聞きたくない。

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 【用語解説】宮城県による救急搬送全国調査

 自治体として初めての取り組み。消防庁と協力し全国約800の消防本部に、患者の搬送先を決めるための医療機関への照会時間▽医療機関に断られた理由−など12項目を質問。12月21日までの回答を求め、東北大学の高度救命救急センターに分析を依頼する予定。今年度中に調査結果をとりまとめ、救急搬送の改善策を探る。

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