【社説】大韓航空機爆破事件:妄想に巨額を費やした国情院
国家情報院の過去史真実究明委員会(過去史委)は24日、「大韓航空機爆破事件が北朝鮮の工作員によって引き起こされた事件であったことを確認した」と発表した。過去史委はまた、「これ以上不必要な議論が長引くことのないよう、根拠のない疑惑提起は差し控えるべきだ」とした。開いた口がふさがらないとはまさにこのことだ。発言自体はもっともな内容だ。だが過去史委にそんなことを言う資格があるのだろうか。
乗客95人、乗務員20人を乗せた大韓航空機858便は1987年11月29日にイラクのバグダッドを出発し、タイのバンコクを経由してソウルに向かっていたところ、ミャンマー付近のアンダマン海上空を飛行中に爆発が起きて墜落した。バーレーンで拘束された犯人のうち1人はタバコに隠していた毒物を服用して自殺し、もう1人の金賢姫(キム・ヒョンヒ)という女性は韓国に引き渡された。金賢姫は北朝鮮の工作員で、翌年のソウル・オリンピックを妨害するため、金正日(キム・ジョンイル)書記(当時)が直接指示したテロであったことが明らかになった。
金正日総書記は2002年に北朝鮮を訪問した小泉総理に対し、日本人の拉致について認めた。当時提示された拉致被害者13人の名簿には、金賢姫の日本語教師とされた田口八重子さんの名前もあった。また日本の記者がかつて金賢姫の住んでいた平壌の自宅に取材を試みたこともあった。大韓航空機爆破事件には既成事実はあっても、隠された真相などないのだ。
しかし韓国ではいつからか一部のメディアや運動家、市民団体から国家安全企画部(現在の国家情報院)が仕組んだ謀略であるとか、事前に把握しながら放置したなどの疑惑が提起され始めた。その多くは、今回の発表を行った国家情報院の過去史委員らと、思想的に近い人々だった。彼らの主張は、当時の政権が大統領選挙を与党に有利に進めるために、大韓航空機を爆破して115人を殺害したというものだった。いくら大事件の裏に陰謀論があるのが世の常だとは言え、これほど突拍子もない話は珍しいのではないか。こうした大韓航空機爆破事件についての陰謀論など、せいぜい荒唐無稽(むけい)な小説か、精神状態に問題がある人の妄想程度でしかない話だった。
ところがこの陰謀論が、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の発足とともに拡大し始めた。それには公営放送であるKBSとMBCが、大きな役割を果たした。「KBSスペシャル」や「KBS開かれたチャンネル」、MBC「PD手帳」といった番組が、同事件に関する数十項目の疑惑を提起したのだ。それも事件の本質とは何ら関係のない捜査過程においての些細な失敗や問題点を取り上げては誇張・歪曲(わいきょく)するやり方だった。
こんな事件に国家情報院の過去史委が真相究明に乗り出すとしたところで、何も出てくるはずがない。3年近くにわたって国家予算を浪費し、下した結論は、結局「事実無根の疑惑」という聞くまでもない内容だった。この件でどれほどの国家的損失が生じたかを考えると、まさに驚き呆れるしかない。
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