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2007年11月26日

◎ASEANとの連携 「中国プラスワン」に拍車

 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)が締結に最終合意した経済連携協定(EPA )で注目されるのは、ASEAN地域に進出する日本企業の域内貿易に関税撤廃のメリットがもたらされ、域内での生産、販売の拡大が促されることである。最近は、いわゆる中国リスクを回避するため東南アジアなどに投資を分散する「中国プラスワン」の動きが北陸の企業でも目立つが、ASEANとの経済連携協定は、そうした動きに拍車をかけるとみられる。

 ASEANは積極的な貿易自由化策の下、年8%前後の経済成長を続けており、日本貿 易振興機構(ジェトロ)によると、ASEANに進出した日本企業は昨年末時点で約四千七百社を数える。人件費の安さやインドを含むアジア全域へのアクセスの良さなどが利点とされる。

 日本はマレーシアやインドネシアなどASEAN主要六カ国と経済連携協定を結んでい るものの、自由化の恩恵はASEAN域内の貿易には及んでいない。しかし、今回の連携協定が発効すると、例えば日本で作った部品をタイの工場で組み立て、マレーシアに輸出するといった場合も関税がなくなる。域内での生産、分業の環境が整うわけで、それを見越した企業進出が目につく。

 ジェトロ金沢によると、石川県内の企業の海外進出件数は昨年末でアジアが百四十五件 と大部分を占める。その内訳は九十三件と最も多い中国に次いで、タイ十五件、シンガポール、ベトナム各七件、マレーシア五件とASEANへの進出も増えている。今年に入ってもコマツ関連企業などがタイやベトナムに工場を新設するなど「中国プラスワン」の動きが鮮明である。

 経済連携協定に関する日本経団連のアンケート調査では、関係を強化すべき国・地域と して最も多かったのはASEANで、次いでEU、中国となってる。政治的リスクが懸念される中国への集中を避ける意識と相まって、ASEANとの連携を重視する企業が多いのである。

 ASEAN側の関税の完全撤廃にはなお時間を要する。連携協定の締結を契機に、世界 の成長センターといえるASEANの活力を取り込んで日本の経済社会を活性化させる取り組みを強化したい。

◎高岡の博物館再整備 金沢と連携が自然の流れ

 老朽化が目立つ高岡市立博物館の再整備構想に、高岡商工会議所が提案してきた前田記 念館(仮称)の理念が取り込まれる方向となった。高岡の歴史における前田家の存在の大きさを考えれば自然であり、財政事情なども考慮すれば、二つの施設を別個に整備する方がむしろ不自然だろう。新たな市立博物館に「前田記念館」的な性格も持たせるためにどのように工夫するか。今後さらに議論を深めてほしい。

 第一に求められるのが、前田家関連の展示、特に高岡に築城してまちを開いた利長と、 その死後にまちを維持、発展させるために苦心した利常に関する展示の拡充であろう。高岡市立博物館も市指定文化財になっている利長の書状などを収蔵しているが、それだけでは弱い。

 その点、前田家の本拠地である金沢の玉川図書館などには関連資料が豊富に残っており 、企画展などでうまく連携したいところだ。博物館のもう一つの機能である調査研究の面でも連携のメリットは大きいはずである。「金沢ゆめ街道」への参加や高岡の利長墓所と金沢の前田家墓所の国史跡指定に向けての取り組みなどを通じて培ってきたきずなを、こんな時にこそ活用したい。再整備構想について話し合うために高岡市が設置した検討委員会でも、ぜひ考えてもらいたい。

 高岡と金沢では近年、加賀藩をキーワードにした広域観光を発信する動きが活発化して いる。新たな高岡市立博物館も、周遊ルートの拠点の一つになることが期待される施設である。その魅力向上に協力することは、金沢にとっても決して損にはならないはずである。

 もう一つ、新しい高岡市立博物館の名称や愛称についても考えてもらいたい。このまま ではいささか当たり前過ぎて、観光客らの注目を引く力に欠けると思うのである。旧四高本館を活用している金沢の石川近代文学館は、金沢経済同友会の提言を受けて、リニューアルを機に「四高記念文化交流館」に名称変更されることになった。高岡もこれを参考にしてはどうだろう。器も中身も新しくするのであれば、それにふさわしい、インパクトのある呼び方を考えてみてもよいのではないか。


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