ビアテスター・マスターエバリュエイターの講習会
(2002/2/9〜10)
受講記録
(5)
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仕
込みのコントロールについて。
自分が想定したビールを作るためのpointについて。
A)糖化について。
糖化の時には、麦芽の中の酵素が働いて麦芽の中のデンプンが発酵可能な糖に変換される。
αアミラーゼは発酵可能な糖分を作り出さない。
αアミラーゼはアミロペクチンの1-4 結合を切る。
1-6 結合のある糖分が出きる。
すなわち、デキストリンという糖分が出きる。
デキストリンを酵母は代謝することが出来ないので、非発酵性糖分としてビール中に残る。
デキストリンが多いと、甘くフルボディのビールが出来る。
βアミラーゼは発酵可能な糖分を作り出す。
αアミラーゼとβアミラーゼの活動を人間が操作する必要がある。
発酵可能な糖分を麦汁中に多量に作り出すにはどうするか?
糖化温度のコントロールになる。
表:
上記の表より、
発酵成分を多く取り出すには、60℃で糖化すればよいことを示している。切れのよいライトなビールが出来る。
甘みの強いフルボディのビールを作るには70℃で糖化すればよいことを示している。
65℃がαアミラーゼとβアミラーゼの活動の境目。
65℃では、ミディアムボディのビールが出来る。
60℃で糖化すれば、発酵可能な糖分が多くできるが、ライトボディのビールが出来る。
糖化温度と酵素活動の関係。
35℃では麦芽の塩化物が融出してマッシュ液のpHを下げる。30分ぐらい。
アシッドレストという。
pHの高い水を使った場合、マッシュ液のpHを下げることが出きる。
褐色麦芽ではpHが下がりやすい。
塩化物の融出による。
40℃ではβグルカナーゼという酵素を働かせる。
グルカンレストという。
βグルカナーゼは多糖類(βグルカン)を分解してグルコースを生成する。
βグルカンはどろどろとしたもの。
βグルカナーゼを働かせる目的は、グルコースの生成ではなくてβグルカンの分解にある。
βグルカンは発酵終了後もビールの中に残り、フィルターを詰まらせる原因になる。
どろどろしたβグルカンをさらっとしたものにするには、40℃で30分間おいておく。
ビールの清澄化。
50℃で30分間、プロティナーゼ(蛋白分解酵素)、ペプチナーゼ(ペプチド分解酵素)を働かせる。
プロティンレストという。
タンパク質を分解して、ペプチド、さらにはアミノ酸にまで分解する。
英国麦芽はタンパク含有量が少ないのでプロティンレストを省略できる。
60℃から70℃にする。
シュガーレストという。
40分から90分間する。
60℃から65℃では、
βアミラーゼが活性化する。
発酵可能な糖分がたくさん出来る。
65℃から70℃では、
αアミラーゼが活性化する。
非発酵性のデキストリンがたくさん出来る。
αアミラーゼとβアミラーゼが同時に働く温度が65℃である。
60分で酵素は燃え尽きる。
糖化時間は60分プラスαである。
最も理想的な糖化温度は65℃でpHが5.2 の時である。
70℃にして、グリコプロティンを作る。
グリコプロティンレストという。
プリコプロティンは、タンパク質の一種で、ねばねばした糖タンパク質でビールの泡持ちをよくする。
また、泡がきめ細かくなる。
77℃になれば、すべての酵素の活動が停止する。
水のPHが5.6以下の時はアシッドレストを省略できる。
グルカンレストは省略可能。
英国麦芽はプロティンレスト省略可能。
温度上昇は、各ステージ、1〜2℃ /分の割合で上昇させる。
英国ビールは英国麦芽を使い、シングルインフュジョンが可能。
ドイツ麦芽はタンパク含有量が多く、ステップインフュジョンが必要。
ドイツ麦芽では、2〜3ステップインフュジョンが必要。
また、アメリカの6条大麦麦芽はタンパク含有量が多く、ステップインフュジョンしないといけない。
pHと酵素の関係について。
糖化液のpH
アミラーゼ活動効率(%)
4.8
98
5.0
99
5.2
100
5.4
95
5.8
85
6.0
65
糖化液のpHは5.0より5.4までの範囲にしないといけない。
もっとも理想的なpHは5.2である。
pHは高くなると収率が悪くなる。
pHが高くなると、ホップのコフムロンが麦汁により多く含まれるようになり、鈍い苦みのビールとなる。
pHは高くなると、麦汁の麦芽風味がボケたものになる。
麦汁のpHをコントロールする方法。
基本的には仕込み水に酸、カルシュウム、マグネシュウムを入れる。
酸:H2SO4、リン酸→取り扱いが面倒。
硫酸カルシュウム(石膏(キブス)):CaSO4・2H2O
炭酸カルシュウム(チョーク):CaCO3
硫酸マグネシュウム(エプソムソルト):MgSO4・7H2O
入手が簡単なのは、石膏、チョークである。
麦芽の中に入れておき、麦芽の粉砕と共に粉になり、糖化液に自動的に入る。
量をどうするか?(硫酸カルシュウムの場合)
使う水の水質分析をする。
水道水であれば水道局に問い合わせる。
水道局に頼む場合は、Ca、Mg をバラバラに出してくれと頼む。
仕込み水に必要なCa量は50〜100ppm(50〜100mg/リットル)。
Ca量は50〜100ppmであれば、糖化液のpHは4.8〜5.4になる。
硫酸カルシュウムを入れるが、必要なものはCaである。
硫酸カルシュウム(石膏)はCaSO4・2H2Oという化学式である。
CaSO4・2H2Oの総重量のうち、Caは何%かを調べる。
原子量:Ca=40、S=32、O=16、H=1
CaSO4・2H2O=40+32+16×4+2*(1×2+16)=172
すなわち、CaSO4・2H2Oが172グラム中、Caは40グラム含まれることを意味する。
たとえば、水質検査の結果、Caが30ppm(30mg/リットル)であり、50ppm(50mg/リットル)にするには、
20ppm(20mg/リットル)のCaを入れる必要がある。
Ca=20ppm(20mg/リットル)に相当する硫酸カルシュウム(石膏)を計算すると、
172:40=x:20
x=86
すなわち、水1リットルにつき86mgの硫酸カルシュウム(石膏)を入れればよい。
仕込み水が、仮にスパージングも含めて1200リットルの時は、
86mg×1200リットル=103.28グラムの硫酸カルシュウム(石膏)が必要となる。
糖化液の濃度について。
糖化釜に入れる水の量は、リットル/Kgで表す。
麦芽1Kgに対する、水の量(リットル)を意味する。
ポイントは糖化液の濃度により、βアミラーゼ活性が左右される。
濃い糖化液ではβアミラーゼが活性化が阻害される。
その結果、αアミラーゼ活性が相対的に有意になり、デキストリンの産生が多くなる。
その結果、フルボディのビールが出来る。
ビールのタイプにより糖化液の濃度を変える。
ライトボディのビール………1.5 リットル/Kg
ミディアムボディ……………2.5 リットル/Kg
フルボディのビール…………3.5 リットル/Kg
スパージングについて。
スパージングに用いる水の温度が高いと、糖分以外のものを洗い流す。
スパージングのpHが高いとタンニンなどが出てくる。
ここでもpHの低い水を使う。
温度が77℃の温水をかけると、温度としては高すぎる。
タンニン、フェノール系の化学物質、高分子タンパク質が出てくる。
よって、76℃以下の温水でスパージングすると、オフフレーバーの融出を防ぐことが出きる。
理想的には、74〜76℃の温水。
スパージングを止めるタイミング。
麦汁のpHが5.8 以上になれば、そこでストップ。
麦汁の比重が1006になれば、そこでストップ。
麦汁を飲んで渋みを感じれば、そこでストップ。
麦芽1キログラムに対するスパージングの量の目安。
煮沸
煮沸の目的。
バクテリアを殺す。
アミラーゼの活性を止める。
ホットブレイクの生成。
たとえば、肉を煮込むと煮込み汁は濁ってくる。
さらに煮込むと煮込み汁は透明となり、灰汁のようなものが出てくる。
これがホットブレイク。
麦汁も煮込むと、タンパク質、タンニンなどが凝固する。
ワールプール時に底に沈みやすい。
澄んだビールになる。
ホップのα酸の異性化。
メイラード反応によるフレーバーの生成。
メラノイジン、カラメルができ、ビールの色とフレーバーが出きる。
淡色系のビールはメイラード反応がおきないように煮沸しないといけない。
スティームで煮沸するとメイラード反応が起こらず色の薄いビールになる。
DMSの除去。
煮沸時に注意することは、
仕込量(発酵タンクに入れる量)と煮沸量の管理。
煮沸時は仕込量(発酵タンクに入れる量)より多くしないといけない。
蒸発による損失があるので。
60分間の煮沸で約9%の蒸発。
90分間の煮沸で約12%の蒸発。
ワールプールで約2%の損失。
その他、約6%の損失がある。
煮沸により、麦汁の比重は変化する。
発酵タンクに入れるときには適切な比重(初めの目標比重)にしないといけない。
煮沸前の麦汁の比重は、発酵タンクに入れる麦汁の比重より低くないといけない。
煮沸前の麦汁の総リッター度=煮沸後の麦汁の総リッター度である。すなわち、含まれる糖の量は等しい。
このことを使って計算する。
たとえば、初期比重1061の麦汁1000リットルを、発酵タンクに入れたいとする。(仕込量が1000リットル。)
すなわち、煮沸後の麦汁の総リッター度は61×1000=61000 LDRになる。
煮沸前の麦汁の比重が、1056であったとする。
61000÷56=1089リットルになる。
煮沸前は比重1056の麦汁1089リットルがあればよい。
煮沸前に比重1056の麦汁が1200リットルあれば、111リットル捨てて、1089リットルの麦汁を煮沸する。
ワールプール
渦を作って、ホットブレイクを釜の底に沈めさせる作業。
ビールを濁らせたり、酸化させたりする原因物質を取り除く。
回転が止まるまで30分かかる。
ワールプールを完全に行うことで、ビールの清澄化と品質は向上する。
エアレーション
エアレーションにより酵母の代謝活動が活発になり、いろいろなフレーバーが生成される。
発酵の前段階では、酵母の増殖時期がある。
酸素(O2)が多すぎると、グルコースからアセチルCoAが生成され、アルコール生成がされずにTCAサイクルがいつまでも回り続ける。
その結果、エステルの生成が減少し、フレーバーが少なくなる。
良いビールにはならない。
酸素(O2)が少ないと、酵母の細胞壁は透過性のある状態にならない。
酵母は、発酵が立ち上がりにくい状態になる。
エアレーションは適度にしないといけない。
麦汁に含まれる酸素量は麦汁の比重が高いほど多くしないといけない。
初期比重:1048の時は、5〜6 mg/リットル。
初期比重:1056の時は、6〜8mg/リットル。
初期比重:1064の時は、8〜10mg/リットル。
初期比重:1072の時は、10〜12 mg/リットル。
初期比重:1080の時は、12〜14 mg/リットル。
エアレーションというのは調節が困難である。
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